和噺

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フェアプレーの噺

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        和噺   
                         R1/11/15
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野球の国別対抗戦、プレミア12に関する記事で、こんなのを読みました。
 
「日本も見習いたいマナー。アメリカ代表が丸に示したフェアプレー精神」
 
要約すれば、アメリカの選手が打ったセンターオーバーしそうな大飛球を、丸選手がファインプレーでキャッチした。打ったアメリカ選手は、丸選手に対して、ヘルメットを取って敬意を評した。
こういうフェアプレー精神において、日本は評判が悪い。例えば、ヒットを打つたびにガッツポーズをしていたり、そういうのは、相手チームへのリスペクトが足りない、とされる。国際大会で批判の的となる。
 
って話。こういうのは、ただの文化の違いなんですけれども、結局のところ、強者の文化が通用し、それが正しいとなってしまう、ということがあります。何が正しいというわけではない、というのは大前提として認識しなきゃいけないと思うんだけど、この上記コラムのように、盲目的に「日本は遅れている」みたいな観点から意見を述べる人が多い。
 
ファインプレーをした相手に敬意を表する、ヒットやホームランの時に過度に喜ばない。そういうのは、アメリカの野球文化です。それを、フェアプレー精神、と言っているだけのことです。じゃあ、例えば、デッドボールを当てられたら当て返す報復死球はフェアプレーなのか、ということになるわけですよ。そういう行為も、アメリカの野球文化として、あるわけです。
 
野球をはじめとした現代スポーツのほとんどは、欧米発祥ですから、欧米文化の不文律のルールが付随しています。それらは言葉としては、マナーとか、フェアプレー精神、スポーツマンシップなどと言われています。それらは、日本や、他のアジア諸国にしたら、ピンと来ないものもあります。いくら相手がファインプレーをしたって、試合中に相手を讃えるというのは、日本人の感覚からしたら、真剣味が足りない、と思う人がほとんどじゃないでしょうか。だから、日本人はやらない、というだけです。
 
ただの、文化の違いなんです。なのに、なぜそれを批判されなくてはならないのか。向こうに合わせなくてはならないのか。それは、欧米文化こそが世界標準となっており、強者であるからです。スポーツは、彼らの文化であり、彼らの土俵の上でやらなくてはならない。だから、フェアプレーをしなさい、スポーツマンシップを発揮しなさい、という話になるわけです。ルール外の「文化」も、彼らに合わせなくてはいけない。そういうことです。
 
それは、僕は強者の傲慢だと思います。ただ、欧米の人たちも、フェアプレーとかスポーツマンシップという自分たちの文化を相対化して考えることは、普通、しないから、実際はもっとシンプルに「礼儀知らずな奴だ」という感覚になります。誰でも普通は、自分たちの文化は当然であり、それは人類共通のものだと思ってしまいます。
 
スポーツは大きな文化ですが、もっと小さな文化、例えば「相撲」であれば、そこでは日本文化が強者になります。相撲は日本しか存在しませんから。だから、朝青龍がダメ押しをしたり、ガッツポーズをしたら、横綱なのに礼儀知らずだ、となるわけです。何がOKで何がNGか、それは明確にルールがあるわけではなく、文化の中でふんわり定義されるものです。それを朝青龍が理解するのは、難しい。
 
欧米の言う「フェアプレー」や「スポーツマンシップ」は、日本で言う「礼儀」や「常識」であって、どちらも、その文化内でのみ通用するものです。僕は、国際化というのは、皆が欧米流のスポーツマンシップに則って試合をすることではなく、また、皆が日本流の礼儀をわきまえてやることでもないと思います。重要なのは、他者を認めること。日本人から見れば礼儀知らずの振る舞いでも、その国の人ではそうなんだな、と認めて共存するのが、国際化だろうと思います。
 
ま、でも一方で「郷に入れば郷に従え」というのも、ありますが、僕はそれすらも日本文化の一つだと思います。例えば、イスラム文化では「郷に入っても郷に従うな」でしょうし。だから、本当に最低限の共通ルールーー例えば、人を殺すなとか、泥棒するなとか、そういうレベルの共通ルールは守った上で、各自、お互いが違っても共存しましょう、というのが良いと思います。
 
野球も、国際大会でやるのであれば、フェアプレー精神とか、スポーツマンシップというのは、むしろ、言うべきではないと思います。それは、欧米(アメリカ)のルールでやれ、という事ですから。アメリカ主催の大会なら、良いんですよ。MLBアメリメジャーリーグ)で、日本人選手が、MLBの不文律を知らないで報復死球を受けたりするのは、当然だと思います。日本人感覚の「郷に入っては郷に従え」からしても、当然です。アメリカ流のフェアプレー精神で臨むのも、当然です。
 
ただ、国際大会となれば、そういう様々な不文律は、あえて無視して、お互いの文化の違いを楽しむぐらいの観点でいるべきだと思います。だから、もし相撲の国際大会をやるのであれば、ガッツポーズしようが、足取りをしようが、あえて髷をつかませて反則勝ちを狙うような力士が出てこようが、良いんですよ。それが国際大会。日本のローカル大会なら、どアウトで批判されて当然の行為も、国際大会ならOK。国際大会というのは、文化的な差異を認め合う、ドライなルールの上で行われるべき。
 
ですから、引き合いに出してすいませんが、最初に紹介したコラムのように、日本もアメリカのフェアプレー精神を見習うべき、なんていうのは、文化の差異を考えない思想です。自国の文化を大切にするということは、相手の文化も大切にするということにつながります。だから日本人選手は、相手がファインプレーをしたら、それは讃えないで悔しがればいいと思います。それは、日本の野球文化ですから。
 
そこでファインプレーを讃えたら、アメリカのローカル大会になってしまう。アメリカ発祥であっても、日本で、韓国で、中南米の国々で、それぞれに進化した野球。アメリカは、フェアプレーをした相手を讃える。日本人は、自己犠牲の精神のもと真剣に臨む。キューバや韓国は、国の威信をかけて臨み、何がなんでも勝ちに行こうとする。それでいいじゃないですか。それが国際大会なんですよ。だから、プレミア12を国際大会として成功させるためには、フェアプレーを讃えない方が良いのです。
 
──【おまけのはなし】────────
 
阿波晩茶ってのを買いまして。乳酸菌発酵させたお茶なんです。四国には発酵茶っていう、中国のプーアル茶に似た茶文化があって、これが結構、美味しい。好きですね。ほとんど四国外では消費されていないと思いますが、碁石茶(高知)とかはネットでも買えると思います。四国の茶文化、面白い。
 
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