和噺

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水源と運動会の噺

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        和噺   
                         R1/11/04
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おはようございます。僕です。今朝から水が止まっていましたよ。いや、正確には昨日の夜の時点で、おかしいなと思ったんですよ。トイレを流した後、ゴポゴポと音がしている。もしかしてだけど〜♪、もしかしてだけど〜♪、それって、お水が、止まってるんじゃないの〜♪
 
どぶろっくですよ。こういうのをテキストで書いて何割ぐらいの人が、パッと分かるんでしょうかね。僕は9割の人が分かって当然と思って書いているんですが、どうですか、どぶろっくの知名度は。キングオブコントで優勝もしたし、トヨタユニクロと同じぐらいの知名度はあると思っているんですが。どうでしょうかね。好きなんですよ、どぶろっく。
 
そんなこんなで昨夜、もしかして水が止まっているのでは、と思ってタンクをのぞいてみると、というか蹴っ飛ばしてみると反響音で分かるので一々、のぞきませんが、空っぽです。いや、毎日夕方にひと蹴りして水量が満タンであることを確かめようとは努力しているんですが、忘れますね。普通に忘れますね。そして、なんか最近、水の出が悪いなとは思っていたんですが、水源に行くのが面倒くさくて見て見ぬふりをしていたんですよ。やっぱり止まりますよね。水量が自然に増えることは決してありませんから。エントロピー増大の法則です。
 
自然状態では、エントロピーは増大していきます。エントロピーとは、乱雑さ。雑草は生え、ヤギは逃げ出し、パイプの水は詰まるのです。増大するエントロピーに対抗するのは、生命です。はい、僕です。僕は、自分と家族の生活を守るために、自然の織りなすエントロピーの増大を防いでいるのです。草を刈り、ヤギを追い返し、パイプの詰まりを除くのです。田舎暮らしは、エントロピーとの戦いです。
 
夜に水源に行くなんて怖いですから、朝一ですよ。朝一で水源直行。写真を撮ってきたのでツイッターに画像を上げときますね。
Twitter @kato_nodoka
山を登って、水源を掃除して、詰まりを直して、タンクの横で吸い上げて(ストローみたいに)、水を出すという作業。トータルで30分ぐらいかな。もう慣れたから、すぐに出来るけど、この詰まり除去ノウハウを構築するのには何年もかかりましたよ。吸い方とか、説明するのが難しいですが。
 
例えば、この間、ホームステイ小屋に引いている水が止まったんですよ。で、僕は外出中だったので、whatapp(外人に人気のLINEみたいなやつ)でスペイン人のジェラルド君に指示を出しながら、通水させようとしたんですよ。
 
その時、送ったのは、こんな感じのメッセージ。取水口をキレイにして、取水口が水に浸かるようにする。もし水に浸からないときは、石でプール的なものを作って、取水口が完全に水面下に行くようにする。で、取水口から15メートルぐらいのところにジョイント部があるから、そこでホースを吸い上げる。ジュースを飲むストローみたいな感じで、吸い上げる。あと、取水口からジョイント部までは、出来るだけホースを真っ直ぐにする。吸うのを数分、続ければ、水は出る。
 
みたいなことを英語で書いて送ったのですが、ジェラルド君、2時間ほどの格闘の末にギブアップ。で、翌日、僕が行ったら数分で終わっちゃうんですよ。このときは、ホースが曲がっていたのが敗因。出来るだけ真っ直ぐといっても、あんまり真っ直ぐにしていなかった。もっと真っ直ぐにしないといけない。で、吸ったら、すぐに出てくる。答えを知れば簡単なんだけど、その答えを知るためには膨大な経験が必要。膨大といっても、せいぜい100回ぐらいの水止まり経験ですが。
 
海外の小話で、こんなのがあります。何億円もする機械が壊れてしまって、どうしても直らない。だからプロの修理屋を呼んできた。そしたら、その修理屋は機械を見て、ある一部分を軽くハンマーで叩いた。すると、機械は正常に動き出した。で、修理屋は費用として100万円を請求した。客が、お前はハンマーで叩いただけじゃないか、ぼったくりだろと言うと、「どこをハンマーで叩けば直るかを知るには、40年の経験が必要です。この100万円は、40年に対する賃金です」って答えたという話。
 
レベルは違いますが、そういうことですよ。僕が行けば、我が家の水はすぐに通るのですが、それを他の人に説明するのは難しい。経験的に、この季節ならこんな感じの詰まりだなとか、吸った時の具合でこれは無理だなとか、これは吸いでいけるなとか、まぁ、いろいろあるんです。素人さんの一番の失敗は、ホースが曲がっていることね。ホースは真っ直ぐ! 可能な限り真っ直ぐ! そして緩やかな下り坂! これを徹底することが、山での水確保の鉄則です。あと、異物混入を可能な限り、防げ。
 
いやー、水道が欲しいわ。町の皆さんは水道代が高いとか不平不満を言うでしょうが、月数千円で安定的な水供給をしてくれるのが、どれだけありがたいか。水道があるって、超便利ですよ。異物混入も無いから、泥で水道が詰まることもないでしょう。うち、ありますからね。時々、水道の水栓内部の網みたいなやつを掃除しないと、水、止まりますからね。台風の後とか、泥や葉っぱのカケラが混じる。すると水栓からの水がチョロチョロになる。スパナでバラして掃除しないといけない。面倒くさい。
 
じゃあ、そもそもうちに来る水を濾過すればいいじゃん、と思われるでしょうが。これも難しい。砂濾し器は、凍結して割れるし。ポリバケツに小石や砂を入れた生物浄化装置も作ったけど、濾過できる水量が少なすぎて断念。圧力を機械でかければいいんだけど、重力のみの浸透では、実用に足る量を確保するのが困難でした。あ、そういえば、貯水タンクの水の出口に、洗濯ネットに小石をたくさん入れて置いておくと、濾過効果があると聞いたな。やってみようと思って忘れていた。今度やってみます。
 
ああ、今日はこんな話じゃなくて、運動会の話をしようと思っていたんですよ。朝から水源を直しにいった勢いで、こんなことを書いちゃいましたが。今から運動会の話(今日の本題)をしてもいいですか? いいですよー! ありがとうオーディエンス。時空を超えて読者の声が届きましたよ。よし、運動会の話をします。
 
昨日、運動会だったんですよ。町民運動会。結果から言えば、13年連続優勝の王者「3区」は、まさかの4位に沈みました。あ、参加チームは全11チームね。うちの村のチームは、総合3位。前半で8位だったことを考えれば、後半は、よく盛り返したものですよ。バレーボールを投げて10メートル先のビール瓶を倒す「ボーリング」という競技があるんですが、ここでトップを取ったのが大きかったね。あと、最終種目のリレーで2位の好成績。うちのジェラルド君も頑張って走ってくれました。
 
さて。昨夜、村の集会場で、運動会お疲れ様飲み会が開かれたのです。そこにスペインのジェラルド君や、デンマークガール×2も連れていって、楽しく話していたのですが。そこでの、ジェラルド君の、運動会に対する感想というのが、面白かった。
 
まず基本知識としてですが、欧米の国々に「運動会」は、ありません。「Sports Day」というのは、あるんだけど、これは各自がサッカーやバスケをやるみたいな会。日本の学校でいえば「球技大会」に近い。いわゆる「運動会」は、存在しないのです。ましてや、老若男女が参加する地域の運動会なんていうものは、無い。まぁ、僕も東京に住んでた時は、そんなもの経験したことありませんから、日本の文化とは言い難いですが。とりあえず、うちに来た欧米人、誰に聞いても、日本の運動会みたいなものは存在しない、と言っています。
 
で、ジェラルド君が参加してみた結果。すげー楽しい、と。特に驚きだったのが、皆が仲の良いこと。例えば、他のチームの競技でも自然に応援したり、同じチーム内では当然、和気あいあいだったり。日本人にしたら当たり前すぎて「え、そこに驚くの?」と思うのですが、その「仲が良い」ということが、ジェラルド君にはカルチャーショックだったようです。
 
ジェラルド君の地元である、スペインの町(バルセロナの一部)では、何かがあれば、とにかくバトルが起こる。ヘイトのぶつけ合いになる。もし、こういう運動会のようなイベントがあったとしても、相手をののしり、攻撃し、殺伐とした感じに、絶対になる、と言うのです。だから、こんなに平和に皆が楽しくやっているのが信じられない、と言うんです。いや、どんな地獄やねん、バルセロナ。まぁ、たしかに今もカタルーニャ独立関係で火の海になったりしているけれども。
 
で、このジェラルド君。ボーイスカウトを長年、やっているんですって。ボーイスカウトでは、しつこいほどに、「皆で協力し、仲良くしよう」ということを教えられる、と。で、彼の町にはボーイスカウトの団体が2つ、あるんですって、どちらも似たようなことを言っている。つまり「皆で協力し、仲良くしよう」ってことですよ。だけど、この2つの団体が、すげー仲が悪いんだって(笑)。町で出会えばバトルになる、みたいな。
 
そういう地獄から来たジェラルド君ですから、なぜ日本では、特に「皆で協力し、仲良くしよう」とも言っていないのに、皆が仲が良いのか、不思議でならない、と言っていました。まぁ、和気あいあいの田舎の運動会に、大層なカルチャーショックを受けていたジェラルド君でしたよ。あと、日本では三食とも米を食べることにも驚いていましたね。「また米!」みたいな。ま、僕らもインドに行って三食カレーだったら、マジか、って思うもんね。そんな感じなのでしょう。
 
もう一つ。運動会の最初に入場行進をするんですが、その時のチーム紹介に合わせて、右手をあげるんですよ。例えば「我が〇〇地区チームは、正々堂々とスポーツマンシップにのっとり、がんばることを誓います! また、〇月〇日には神社のお祭りがありますので、ぜひ皆さんいらしてください!」みたいなアナウンスに合わせて、行進しながら右手を伸ばすんですよ。選手宣誓、みたいな感じで。分かるでしょう、普通でしょう。
 
でも、この光景に衝撃を受けるヨーロッパ人、3名(スペインとデンマーク×2)。彼らにしたら、右手を伸ばして宣誓するポーズは、ナチスだそうです。ハイル・ヒトラー!ですね。絶対にやってはいけないポーズだそうです。で、これ本当にやっていいの?と戦々恐々とする3名。ま、ここは日本だから大丈夫だよと言ったら、おそるおそる右手を上げて、我が村の一員として戦うことを誓ってくれていましたが。
 
ちなみに、じゃあヨーロッパでは、こういう「誓い」の時に、どういうポーズをするのと聞いたら、右手をグーにして心臓の位置に当てるポーズだ、と言っていました。進撃の巨人の兵士のポーズですよ。心臓を捧げます!みたいな。あれ。あれが欧米的には良いらしいですよ。
 
まぁ、ところ変われば文化も変わる。田舎町の運動会の入場行進も、YouTubeにでもUPされて「ナチスと同盟を組んでいた大日本帝国の名残が、日本の田舎に存在した!」みたいに英語で書かれたら、炎上しそうだよね。ひょっとしたら、来年の行進は、進撃の巨人バージョンになっているかもね。ま、そんな運動会でした。来年は優勝したいね。リレー用に、この時期に合わせてジャマイカ人を10人ぐらい、呼び寄せてみようか。また明日。チャオ!
 
──【おまけのはなし】────────
 
ドラクエ1でステゴロの戦いを続ける我が子に痺れを切らしたので「武器を装備したら?」と忠告。そこで現時点(レベル9)での装備を確認すると、「りゅうのウロコ」のみ装備。お前は、はっぱ隊か。全裸に、りゅうのウロコを股間につけた勇者が、町の周囲をうろうろしてドラキーを殴り倒すゲーム。いや、もうそいつは勇者じゃない、変質者や。とりあえず「どうのつるぎ」と「ぬののふく」を装備して、旅立って行きました。「わあ、すごく強くなった」だって。よかったね。
 
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