和噺

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レンマの噺

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        和噺   
                         R1/10/19
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最近、キンドルでこの本を読んでいるんですけれども。
 
『レンマ学』中沢新一
 
個々の事象を積み重ねる知の体系である論理的な「ロゴス」に対して、全体を一気に把握する知としての「レンマ」。で、現代文明は、西洋の「ロゴス」をベースに成り立ってきたけれども、全く違う体系の「レンマ」っていう考え方もあるんだよ、って話。
 
ロゴスってのは、いわば「脳」の考え方なんですね。AならばBである。で、BならばCである。ゆえにAならばCである。と、論理を積み重ねていく。科学も哲学も、そういうところで成り立っています。レンマってのは、脳ではない。よく分かんないのだけど、身体とか、もっと原始的な何かで、いきなりC、という答えにたどり着く感じ。
 
本の中では、南方熊楠の粘菌の話とか、タコの話なんかも出してきます。タコってのは、脳が無いんですね。というか、神経系が全身にあって、全身が脳、みたいな。ニューロンとかシナプスも、吸盤とかにありまくる。吸盤で考えているんですよ、タコ。だから足を切っても動くんでしょうね、タコ。これは、脳から全身に指令を送る脊椎動物は全然違う仕組みらしい。
 
脳を経ない反応は、速い。劇速。脊椎動物の代表、カメレオンさんの変身を見てみましょう。周りの景色に溶け込みますよね、カメレオン。じわーっと変わっていって、あ、緑だったのが白くなっていったよー、みたいな感じ。この時、カメレオンは周りを見て「白いな」と思って、「じゃ、白くしよう」と思って、身体の色を変えていくわけです。
 
一方、タコ。脳みその無い、というか、全身が脳であり全身で考えるタコ。じわーっと変わりません。バッ、と変わる。0.1秒で変わる。コンマ秒で変わる。レベルが違う速さです。脳を経ない反応。このタコが、レンマらしい。カメレオンは、ロゴス。いや、もう悪口を言う時に「このタコ野郎」とか言えませんね。タコ、すごいもん。タコ様ですよ。
 
で、僕の日常の例ですが、ノートの一点から一点に線をバーっと引くときに、しっかり見て、あそこを狙って線を引くぞ、と思うと、線がふにゃふにゃってなったり、結構ずれたり、まぁ、うまくいかないんですわ。でも、本当にたまに、無意識に、バーっと引くことがある。すると、その線が、もう0.1ミリも違わずに、バッチリその線に行くんですよ。自分では、線を引いたことも意識していない感じ。作業の流れで、バーっと線を引いて、気づいたら、あれ、すげー合っている、みたいな。はい、レンマ。
 
たぶん、その時の僕は、脳で考えていないんですよ。タコみたいに手で考えていたんでしょうね。いや、人間はタコと違って脳があるし、脊椎動物じゃねぇの、と思われるでしょうが、そもそも人間も進化の過程では、脳は無かったわけですよ。脳が無い、全身にシナプスが張り巡らされた状態の生命体から、進化していて、その名残ってのは、あると思う。中沢新一さんは、あるって言ってた。だからあるんじゃないの。
 
体で覚えるっていうのも、そういうものですよ。また逆に、意識すると動けなくなる、という例もあります。「歩く」という行為。普段、何気なく歩いていますけれども、重大な場面で歩くとき、人間は歩くことを「意識」します。そうすると、右手と右足が一緒に出ちゃったりして、うまく歩けない。脳を経た方がうまくいかない、考えた方がうまくいかない、という身近な例です。歩くとき、人間は考えません。じゃあ、何が考えているのか。レンマです。
 
さっきから「レンマです」が、Mr.マリックぽくて面白いなと思っているんですが。まぁ、難しい本ですわ。流し読みしていますけれどね、なんか、すげー重要なこと言ってる気がする。だから、興味あったら読んでみて。
 
『レンマ学』中沢新一
 
ロゴス全盛の現代社会で、こういうものってスピリチュアル系、みたいにまとめて捨てられている感じがしますが、そもそも人間がどれほど世界を把握しているか、怪しいものですから。数百年前も、数千年前も、人間は全ての世界を把握していると思っていますからね。今も同じですよ。で、後から見たら、把握していないっていうのも、同じですよ。世の中、分からないことはいっぱいある。だから楽しいんじゃない、って思います。
 
──【おまけのはなし】────────
 
毎夕、薪ボイラーで湯を沸かしているんですが。そのボイラーの薪投入口の蓋の上に、ムカデの子供がいたんですよ。だんだん熱くなるでしょ、蓋。最終的には死ぬかな、とか、でもムカデだし死ぬべきだな、とか思っていて、見ていたんですが。慌てふためくのを見ると可哀想になったので、団扇で弾き飛ばして逃がしてやりました。あれでしょ、僕が死んだ後、お釈迦様がこのエピソードを思い出して、なんか地獄から救ってくれるやつだ、と思いましたわ。
 
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