和噺

まぐまぐで配信中のメルマガ「和噺」の過去ログです

裁判員裁判の噺、その3

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
        和噺   
                         R1/09/28
───────────────────
 
おはようございます。今日、僕のひいじいさんの100回目の誕生日ですわ。まあ、もう死んでますけどね。1919年9月28日生まれ。80歳ぐらいで亡くなったんだっけかな、20年前ですね。100年前には、読者の皆さんはたぶん生まれていないし、100年後にはたぶん死んでいますから、まぁ気楽にいきましょう。裁判員裁判の噺、3回目です。
 
裁判官(プロ)は3人いる、と言いましたが、そのうち1人がリーダー、あと2人は見習いーーというのは変だけど、小僧っ子みたいな感じの人でした。メインの裁判官、裁判長か、その人は50歳ぐらい。みのもんた風の人です。以下、みのもんたと言いましょうか。で、あとの2人はひょろっとした30歳前後の男性、ラバーガールをイメージしてください。みのもんたwithラバーガールです。裁判官3人は、そんなラインナップでお届けします。
 
議論の進行は、みのさんが行います。ラバーガールは、ほとんど喋らない。実際、このあと審議が3日ぐらい行われるんですが、ラバーガール、ほぼ一言も喋っていないと思います。というか、みのさんも進行役であって、意見を述べてはいない。生徒に議論させるための先生、みたいなやつ。マイケル・サンデル的な位置ですよ。今後の議論の中で、裁判官3人は、ほぼ意見を述べません。
 
で、審議初日。幼児2匹を裁判所近くの保育園に預けて身軽になった僕。普通にTシャツGパンとかで行ったんですが、皆さん、結構スーツなどの正装をしていらっしゃいましたね。まぁいいや、どうせ無職だし、僕。で、初日は、裁判長による、あ、すいません、みのもんたによる、事件についての説明から始まります。
 
まぁ、この事件の中身について話したいのは山々なんだけど、たぶんアウトだよね。オブラートどころか、ジップロックに包んでOPPテープでグルグル巻きにした感じで話しますわ。えっとね、なんか悪いことした人がいたんだよ。人は死んでいない。通りがかりの、無関係な人に、悪いことしちゃった人がいたのね。良くないじゃん、そういうの。で、捕まったのよ。で、自分が悪いことした、ってのも認めているの。で、被害者はすごい怒っていて、刑務所にずっと閉じ込めろ、って言ってるの。そんな感じ。
 
で、どんな悪いことしたかっていうのを、まず、証拠見聞とかいうんですかね、警察官が再現した写真を、みんなで見るの。小芝居してるの。こんなふうに悪いことしたんですよ、って。で、いつ、どこで、どんなふうに、悪いことをしたんですよって言うの。ま、人が死んでいるわけじゃないから、グロ写真とかじゃないんだけどね。殺人事件だと、ここで死体写真が出てきて、それを見た裁判員がトラウマ抱えてしまって裁判所が訴えられるみたいな訳わからんこともたまに起こるよね。この間、ラバーガールは、ただただ座っている。
 
で、こんな感じの事件説明が、休憩を1時間ごとに挟んで、午前中に3時間ぐらいやったかな、って感じ。で、こういう感じの事件だと、今までの判例はこんな感じですよねー、っていうのを、スライドで見せられる。後で、これは最終的に、超重要になってくるんだけど、ここで「スライドで見せられる」ってのがポイントで、まず、遠くて小さくて、ほとんど見えていないんですよ、今までの判例が。で、流れ的にもサクッと流すから、これが重要になるとは、この時は僕は全然思っていなかった。
 
後から思えば、今から思えば、ここできちんと、類似した事件の判例をプリントアウトしてもらうとか、メモっておくとか、するべきだったなと思っています。っていうのはネタバレ的なことになるけど、僕は、最終的に判決に納得していませんから、ここの類似事件の判例をチェックしとかなかったことについては、今は後悔している。ただ、その時は、まさかそれが重要になるなんて、全く思いもしていませんでした。
 
で、その類似事件の判例も含めて、事件説明をバーっと行ったみのもんた。で、昼休みですわ。実はこの日の朝の時点で、こういう説明がされていました。「お昼休みは、自由です。仕出しのお弁当を頼む場合は、1人500円で、裁判所を通じて頼めますので、言ってください。外に食べに行くことも自由です。ただ、できたら初日の今日は、これは私、みのもんたからのお願いという形なのですが、皆さんと色々、お話しもしたいので、お弁当を頼んで、お昼はここで一緒に食べませんか?」と言われたんですよ。
 
まぁ、そんなことを言われたら、僕も大人ですから。本当は何年かぶりに自由なランチを、ラーメンでも食いたいな、とか思っていたんですが。まぁ、みのさんが言うならしょうがないか、と思って、500円のつまらない弁当を頼んだわけですよ。他の裁判員の7人(補欠2人を含む)も、みんな、お弁当を頼んでいました。大人だね。で、事件の説明が終わったところで、じゃあお昼にしましょうか、ってんで、みのもんたwithラバーガールと8人の裁判員で、お弁当タイムですわ。
 
まぁ、僕はこの時の想像として、裁判員の心得的なものとか、注意事項とか、そういうのを話されるのかな、と思っていたんですよ。だから、いなきゃいけないな、と思っていたんですよ。そしたらみのもんた、こいつのテンションとしては、いやぁ、皆さん当たっちゃって大変でしたね、すいませんね、何日かで終わりますから我慢してくださいね、これは大変な事件ではありませんから、そう深く考えずに、仲良くやって、さっさと終わらしましょうね、みたいなことを笑顔で滔々と語りだすわけですよ。
 
で、他の大半の裁判員どもも(後々に言うけど、僕が、この人はまともに議論していると思った裁判員(補欠含む)は、7人中2人だけ)、いやぁ、大変ですよ、もうどうしていいか分からなくて、早く終わってくれないかなと思ってますよ、みたいな笑顔で話しているわけですわ。もう、さっさと帰りたいというか、こんな面倒くさい、自分とは関係ないことから、解放されて楽になりたい、という思いで、みのもんた裁判員(の大半)も一致しているわけですよ。で、ニコニコとつまらない弁当をつついているわけですよ。
 
もうね、アホかと、バカかと、腑抜けかと。そりゃ、嫌だ、面倒くさいってのは分かりますよ。でも、そんなのだったら、断ればよくね? 実際、初日の抽選会の時にも、無理だと思う人は断っても構いません、みたいな説明が、裁判所職員からあったはず(たぶんあったと思う、あったんじゃないかな、あった気がする、byさだまさし)。その時点で断ればよくね? そんなに嫌なら。ってか、みのもんたの、そのおもねるような態度は何? お前もやる気ないわけ? 裁判長じゃないの、みのさん。この時期は昼の帯も終わってヒマでしょ? みのさん。
 
そんな、ホンワカした空気ですよ。馴れ合いですよ。僕は、いや、この判決は何人もの人生を左右することだし、真剣にやろうよ、てか、僕は真剣にやるつもりでいたんですよ。法律は知らないけれども、市民の感覚として、このぐらいの罪ならば、このぐらいの罰、という自分の直感に従って、きちんと議論しようと思っていたわけですよ。それが、みのもんたをはじめとして、なんだこの空気は。ラバーガールは無言で弁当食っているだけだし。
 
で、初日のお昼は終始そんな感じで、ワイワイキャッキャの馴れ合いの中で、ただただ雑談で、それもプライベートには踏み込めないから、しかもお互いに名前も知らないから「ああ、3号さんはここまで2時間かかるんですか、遠いですねー」みたいな、秘密組織の昼休みみたいになっていましたが。冷めた焼き鯖をつつきながら、こんなだったら温かいラーメンを食いたかったわと思いを馳せる、初日の昼。あれ、このペースで行くと、何日かかるんだ、この話。まだ明日も続きます。
 
──★バックナンバーはこちらから───
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━