和噺

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フランスの噺

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        和噺   
                         R1/09/24
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フランスの読者さんからメールいただきました。ありがとうございます。前にも書いたと思いますが、うちではバックパッカーのホームステイを受け入れしていて、圧倒的に多いのがフランス人ですからね。僕は一度も行ったことないのに、すごく知り合いが多い国になっています。で、そんなきっかけで、今日はフランスの話。ボンジュール! みなさんいかがお過ごしですか。バゲット食べていますか。アンドゥトロワ。
 
一昔前になりますが『フランス人は10着しか服を持たない』って本が流行ったじゃないですか。読んでないんですけど、素敵なものに囲まれて生きよう、物の多さは幸せじゃないよ、みたいな内容じゃないでしょうか。「フランス人は〜」というタイトルからして、しゃらくせえなコノ野郎、とか思って読む気になっていないから、想像だけで語っていますけど。
 
で、うちに来たフランス人どもを見るに、10着しか持ってないってのは、あながち間違いじゃないな、むしろ3着ぐらいで生きてるんじゃね?って思います。しかも、上質なお気に入りの服とかじゃなく、その辺で拾ったようなジャージで過ごしているやつが、基本だなと。そりゃ、うちに来る人はバックパッカーが多いですが、一応、中にはちゃんと働いていて、夏休みとかで来る人もいるんですが。そういう人でも、全くオシャレじゃない、そもそも服を全く気にしていないように見える。
 
フランスから自転車で来たカップルがいたんですがーー書き間違えじゃないです、フランスから自転車で来たんです、1年半かけて。北欧、ロシア、モンゴル、で、中国はフランス人が入国できないらしくって、しょうがないから韓国に行って、日本に来て、我が家までざっくり1年半。自転車で渡れない川はカヌーで来たよ!みたいなカップルがおりました。
 
そいつらとか、寝間着か!みたいな服装でしたからね。ヨレヨレの灰色のジャージ1着で過ごしていました。僕も大概、オシャレとは縁遠い人間だけど、それでも、いや、お前らとイオンに行くのはちょっと恥ずかしいぞ、と思ったぐらい。なんか服を買ったろうか?とも言ったんですが、いや、寒くないから大丈夫、みたいな。今時、寒さをしのぐ目的のみで服を着る人間はそうそういないぞ、と思いましたがね。
 
でも、そのカップルの男の方が、1年半の旅で靴がボロボロになったから、もしいらない靴があったらくれないか、と言ってきたんですよ。ちょうどウチに、消防団でもらったままで使っていないスニーカーがありましたから。ちょっとここで消防団のスニーカーについて説明しますと、僕は地元の消防団に所属していまして、火事があったら出動がかかって参加するんですが、この10年で2回しか火事の現場に行っていません。火事以外だと、行方不明者の捜索とか、そんなのも年1回ぐらいあります。
 
で、その消防団で、毎年、競技大会みたいなのがあるんですよ。操法大会っていうのが2年に1回あって、逆の2年に1回で板送りというのをやります。操法は全国でやっているから、ご存知の方も多いと思うけど、板送りは高知のローカル競技ですね。ワイヤーで吊るされた板を、放水で押し合うという競技です。YouTubeに動画があったわ。これ。こんなやつ。
 
板送りの動画
 
ついでに操法も紹介すると、こんなやつ。近所の分団の練習風景。中央分団はやべえくらい上手い。神。
 
あ、一応言っておくと、うちの集落では、消防団に強制加入とか、入らないと村八分とか、そういうのは全然無いです。酒を強制されて大変、みたいなのも全然無いです。僕としては、人との繋がりができるし、入っていて良かったなと思うことの方が多いですね。だけど、それはうちの集落の場合であって、同じ町内でも、他の分団とかになると、また雰囲気は違うと思うから、一概には言えませんけど。ほんと、地域によって違うんですわ。ケースバイケースです。
 
で、その操法とか板送りの選手になるとーー板送りはほとんどの人が選手になりますーー、スニーカーが配られるのです。みんな統一のスニーカーで競技に臨むのです。金の出所は知らんけど、誰かの税金じゃね? 自治省から消防庁から、そして末端の消防団の活動資金に回ってきたやつじゃね? それが派手な色のスニーカーとなって、僕の手元というか足元にまで届いているわけです。
 
そう、派手なんですよ。せめて黒とかにしてくれりゃ普段使いしようかとも思うんですが、黄色とか赤とか、フランス人じゃあるまいし、そうそう履けませんから、気にしますから。で、競技の時に履いたきりで使っていないスニーカーが溜まっていたんですよ。
 
で、よれよれジャージのフランス人に「使う?」って言ったら、使う使う、って言って、黄色のスニーカーで旅立って行きましたよ。やっぱり自転車で帰るんですって、今度は東南アジアからインド経由で。ってことで、国民の税金で買った消防団のスニーカーは、最終的にインド経由でフランスにたどり着いたわけです。
 
その自転車カップルの男の方は、もともとは高校の先生だったんですって。そもそもなんで高校の先生になったかっていうと、先生は休みが多いと思ったから。だけど、実際はそんなに多くなかったから、嫌になって辞めて、自転車の旅を始めた、という流れだそうです。へぇ、そんなにフランスの先生って忙しいの、夏休みってどのくらいなの? 一週間ぐらい? とか聞いたら、いやいや、二ヶ月しかないんだよ、とか言うんですよ。オンリー・ツー・マンス、とか言うんですよ。
 
え、お前今、オンリーとか言うた? オンリー二ヶ月とか言うた? エコノミックアニマルのジャパニーズの前で夏休みが二ヶ月「しか」無いとか言うた? いや、実はここ、僕の記憶があやふやで、ひょっとしたらこいつ「オンリー・フォー・マンス」と言っていた気もするんですが、まぁ、二ヶ月だろうが四ヶ月だろうが大した違いはないですわ。で、その夏休みが「短い」から嫌になって辞めて自転車旅。日本に来るまで1年半、帰って1年半、3年ぐらいの旅ですわ。
 
ま、そんな奴とかね。総勢、十数人のフランス人はウチに来ていると思うけど、中には日本が気に入って、うちの近所に住み着いた奴もいますわ。彼は独学で日本語ペラペラで、だけど大学を卒業していないから、ワーキングビザが取れないんだよね。高卒だと難しいらしい、いくら日本語ペラペラでも。大卒で、かつ、大学で専攻した科目と関連する業種に就職する場合は、ワーキングビザが取りやすいんだって。
 
彼は、まずウチで2週間ぐら滞在して、その翌年、今度はワーキングホリデービザを使って1年間滞在したんですよ。その間に、車も買って、家も借りて、うちの近所で生活拠点を整えて、僕もなんとかワーキングビザを取得してやろうと試行錯誤したんだけど、アウト。高知県の北川村にモネの庭ってのがあって、モネはフランス人だから、モネのコスプレして就職すれば、みたいな方向にもやってみたんですけど、アウトでしたね。とにかく、高卒ではビザが下りない。人生で初めて、大学は卒業すべきだなと思いましたわ。
 
で、日本にいられないから、彼はパリに帰って、セーヌ川のほとりのカフェで半年ぐらいがっつり稼いで、また日本に帰ってきて、というサイクルになっています。パリの方が賃金が高いからね。なんか日本にも、半年間タクシー運転手とかして金を稼いで、後の半年をタイとかベトナムでのんびり過ごす人、いるじゃないですか。ああいう感じ。あれのフランス→日本版。観光ビザで三ヶ月滞在して、またパリに戻っていく、みたいなことをやっています。
 
そんな彼が明後日、また日本に戻ってくるから、今日はスペイン人が彼の家を掃除しに行っているという。なんだかよく分からないことになっていますが。まあ、そんなですよ、フランス。あ、そうそう、フランス人で日本語を勉強している人は、結構、日本語がうまいです。発音というか、イントネーションが似ているのだろうね。英語圏や、ドイツ人よりも、基本的にうまい。あと、フランス人は日本のチーズがしょぼい、でも豆腐はいっぱいあって嬉しい、って言う。以上、フランスの話でした。ではまた。Au revoir!
 
──【NEWS PICKUP】────────
 
「温暖化 16歳 国連で怒りの演説」
 
スウェーデンの16歳の女の子の演説が話題になっています。動画はこちら。
 
ま、僕は温暖化の主な原因は太陽活動だと思っていますが、それとは別に、そもそもバカみたいに石油を燃やすことは良くないし、消費社会は良くないと思うので、呉越同舟っていうんですか、温暖化対策でエコとか節約って方向に行くのは良いことだと思っています。
 
で、この女の子の演説。感情が伝わってくるね。いつの時代も、人を動かすのは感情なのかな、と思わなくもないね、こういうのを見ると。ある意味、狂信的な思い込みによって人は動くんだろうね。それが正しい、正しくないは抜きにして、やっぱり21世紀になっても感情が最も人を動かす原動力になるのだな、ってことに感慨を覚えるってことです。それは怖くもあるし、武器にもなる。
 
そして、そういう場合の感情発信源は少女と相場が決まっているよね。ジャンヌダルクですよ。これが少年だと、何をガキが抜かしとんねん、ってなるけど、少女だと、なんか神々しさがあるんですわ。人間は斯様に感情的な生き物なのです。ところで、この子、英語うまいね。天性のものだろうけれども、演説もうまい。間の取り方とか。熱い中にも冷静な部分がある。才能ですわ。
 
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