和噺

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ボケた祖母の噺

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        和噺   
                         R1/09/18
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92歳の祖母がいまして。ずっと東京で暮らしていたんですけれども、なんだかんだあって、数年前から僕が面倒を見ているんですわ。介護、というほどじゃないけれども、一人暮らしは不可能なのでね。というのは、体は元気なんだけれども、頭がボケて、短期記憶が続かないんですよね。1分前のことを忘れてしまう。『博士の愛した数式』みたいなやつです。
 
 
博士は努力家だから、忘れないようにメモを身体中に貼り付けていましたが、祖母は別に努力家ではないので、ただ同じことをリピートします。今はサービス付き高齢者住宅にいるんですが、何年間か山奥で一緒に住んでいて、その頃は、祖母が動物の世話がしたいというので、犬の世話を任せていたんですよ。アニマルセラピー的なことにもなるかな、と思って。
 
うちでは、犬のエサは1日1回で、祖母にも、夕方の5時にやってね、という風に任せていたんですね。で、夕方5時にエサをやるわけですよ。犬、すぐに食べ終わるんですよ。1分ぐらいで食べ終わるんですよ。で、そしたら空の皿と犬が残りますよね。で、その時点で祖母は、犬にエサをやったことを忘れているんですよ。1分、たったから。で、忘れているからエサをやるんですよ。で、犬が食べるんですよ。エンドレスですよ。エンドレス餌やりですよ。
 
太るためには、1日1回、どか食いするのが良いらしいですね。モデルさんは1日7食ぐらいこまめに食べるでしょう、一方、太らなきゃいけないお相撲さんは1日2食をたっぷり食べるでしょう。うちの犬は、1日1回、空になれば注ぎ足される、わんこドッグフード(偶然ダジャレが発現)状態で、どんどん太っていきました。ま、太ったから、僕が気づいたんだけどね。そういう状態でエンドレス餌やりをしているということに。
 
犬が豚みたいになったので、こりゃマズイってんで犬のエサは取り上げて、ニワトリのエサやりにジョブチェンジさせました。ニワトリは、餌を無限にあげて構いませんから。で、祖母も、エサを持ってニワトリ小屋に行くけど、エサ箱がいっぱいだったら、エサを持って帰ってきますから。これは、うまいことハマりましたね。家から20メートルほどのウォーキングにもなるし。認知症にはニワトリだな、と思いましたわ。
 
もちろん、育児がケースバイケースであるように、介護や認知症もケースバイケースだろうけれども、ひょっとして何らかの参考になればってことで、具体例としての話ですよ。一例としてご紹介します。
 
で、そんな祖母も今はサービス付き高齢者住宅にいるんです。介護施設にもいろいろなレベルがあって、サ高住(さこうじゅう)は一番、介護度が低いレベルのやつですね。ごはんは3食出てくるけど、看護婦さんとかが常駐しているわけではない。区分的には、普通のアパートの賃貸契約って感じです。まさに、サービスが付いている住宅、です。
 
これを探すにも、ハマるところが見つからなくて。というのは、本人も何を望んでいるか分からないんですよ。部屋は広い方がいいのか、狭い方がいいのか、街中にある方がいいのか、田舎で自然が周りにある方がいいのか。この辺を、入居する本人が言ってくれればいいんですけど、何しろボケていますから。短期入所をしては、ちょっとトラブって、みたいなことを繰り返していたんです。
 
試行錯誤を繰り返して、最終的に、今、僕が「これが正解だった」と思ったのは、洗濯機。うちの、ただの具体例ですから、他の人には当てはまらないと思いますが。祖母は洗濯が好きなんですよ。いや、僕も子供の頃から一緒に住んでいて、最近、気づいたんですが、好きなんですよ。趣味が洗濯だったんですよ。家事をやっているんだと思っていたんですが、あれは趣味だったんです。と、僕が勝手に思っているだけですけれども。
 
祖母の行動を観察していたら、異様に洗濯機を回している。タオル1枚でも汚れ物があったら、洗濯機を回す。昔は、よく働くなとか、綺麗好きだなと思っていたんですが、たぶん、単に汚れものを洗濯機に入れて、ピッ、ってボタンを押すのが好きなんですよ。なんだそれ、と思いますが、趣味は人それぞれ独自のものがありますからね。そこで、よし、洗濯機を置ける施設を探そうと思ったんですわ。
 
ただ、それがなかなか見つからない。というのは、普通、洗濯ができる人は老人ホームに入りませんから。施設の洗濯は、共用の洗濯機を自由に使えるとか、洗濯サービスがあるってところが多いんですよ。だけど祖母の場合は、自分の洗濯機を置きたい。共用の洗濯機の施設は、試したけれども、ダメだったんです。使いたくないんですって。で、洗濯機が自室に置けるサ高住を見つけて、入居したら、これがうまくハマった。洗濯でストレス解消になっているらしく、安定したサ高住ライフを送っています。
 
ちょっと話は飛ぶけど、「子供の顔も分からなくなった」みたいな、悲しげな話を、よく聞くじゃないですか。うちの祖母の場合は、僕と、僕の弟が子供みたいなもので、赤ん坊から成人するまで育ててくれましたから、まぁ、孫だけど子供みたいなものです。で、僕はよく会っているから覚えているんですが、この間、うちの弟が、1年ぶりぐらいに祖母を訪ねてきて会ったんですね。
 
で、祖母も一瞬、誰だか分からなかったから「あんた誰?」と、弟(孫)に対して、こう来たわけですよ。弟もちょっとショックっぽかったんですが、そこで、僕は、祖母の性格を知っていますから、こう思ったんです。その時、祖母は、「この人は見覚えがあるけれども、誰だっただろう」というぐらい気持ちの「あんた誰?」なんですよ。で、たぶん、弟(孫)だって分かっているんですが、自信がないし、保険のために、あと「ボケている自分」を盾に、そういうことを言ってバリアを張っているんですよ。
 
というのは、単純に忘れている、っていう方が恥ずかしい感じがするから、ヤバイし。だから逆に「あんた誰?」みたいに、ちょっと盛ってきている。と思ったので、「あんた誰?」と弟(孫)に対して言う祖母に、こう言ったんですよ。「この人は、インドネシアから来たポピンさんだよ」と。
 
そしたら「嘘だ」と言うんですよ。「あんた、〇〇(弟の名前)でしょう」と。ほら、分かってんじゃねぇか。こいつがインドネシアから来たポピンさんじゃないって分かっているじゃねぇか。ま、それは軽いギャグのような感じで言ったので、「あんた誰?」という、定番の悲しい質問も、このような感じで笑いに転化できたよ、という事例です。
 
皆さんも、親御さんがボケてきて「あんた誰?」とか言ってきたら、「私は、インドネシアから来たポピンです」と言ってみてください。そしたらたぶん「違うでしょう」と言ってきますから。あんた誰とか言っても、普通、ポピンじゃないとは分かっていますから。もし、「そうですか、ポピンさんですか」と言われたら、しょうがないから、その日はナシゴレンの作り方でも話してあげてください。
 
──【NEWS PICKUP】────────
 
千葉の停電が長引く遠因に、倒木の問題が。
 
大量の倒木によって、電線が寸断されて、で、大停電の復旧が長引いているという話。問題は2つあって、一つは、倒木を処理できる人が少ないこと。もう一つは、そもそも台風で木が倒れてしまうこと。
 
倒木処理からいえば、僕も経験が(素人ですが)ありますが、本当に難しい。木が他の木に引っかかって、宙ぶらりんになるとかね。ヤバイですが、ありますわ。森の中の特定の木を倒すのは、難しい。
 
だから、まずは森を適正に管理することが大切なんです。間伐をして、不要な針葉樹は伐採して天然林に戻しておくことです。天然林は、根っこの張りが良くて倒れず、保水力も高いですから。これは全国でやらなきゃいけないと思うよ。誰に言えばいいの?環境省?小泉ジュニア?よろしくです。
 
──【BOOK REVIEW】────────
 
 
昔、3巻ぐらいまで読んで、別にピンと来ないなと思って後追いもしていなかったんですが。数日前に、28巻までを期間限定で無料公開しているっていうんで、じゃあ読んでみるかと思ったら、クソ面白いな、これ。おかげで睡眠不足ですわ。最新刊の29巻まで追いつきました。無料公開は今日までだそうで、じゃあもっと早く言えよ、って話だと思いますが、しょうがないじゃん、読んでからじゃないと薦められないし。ってことでオススメ。
 
今日の22時まで、キンドルとかLINEマンガとか、いろんな媒体で無料公開していますよー。今(正午)から1冊20分のペースで読めば間に合うよ。
 
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