和噺

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進学校の噺

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        和噺   
                         R1/09/10
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進学校に通う男子が、将来の選択肢が限定されてしまっている、小説家になりたいけど無理、というネット記事がありました。
 
進学校に通って、一流大学に行けば、将来の選択肢が増えるように思われるでしょうが、実はそうではない。進学校(高校)→一流大学→一流企業というルートが限定されており、例えば「小説家になりたい」とか「大工になりたい」とか「三流大学に行きたい」という希望は、叶えられない。周囲の反対がすごいし、応援どころか、非難ばかりを浴びることになってしまう。という話。
 
なんか、すごく分かるんですよ。わかりみですよ。僕も超進学校(男子校)に通っていましたからね。この「進路の限定」は存在するんですよ。え、なんで開成に行ったのに東大に行かないの?(目指さないの?)みたいな。いや、行きたくないし、とか言っても、それは行けないだけじゃないの、負け惜しみじゃないの、という空気がある。超ある。あるある。あるあるを言いたい〜。
 
あるあるを言いたい、っていうRGさんのネタがあるじゃないですか。あれ、テレビで見ると全然面白くないでしょう。でもね、ラジオで聞くと超面白いですよ。昔、たぶんオードリーのオールナイトニッポンだと思うけど、RGさんがゲストで来て、あるあるネタをフルの尺でやるんですよ。ラジオで、5分ぐらいフルで前振りの歌を歌って、最後に一つあるあるを言う。超面白い。テレビで1分の前振りだと面白くないんですよ。媒体によって最適なネタが変わることはあるよね、と思いましたわ。
 
さて。僕もそうですし、世間の超進学校に行っている大半の人もそうだと思うんですが、そもそもなんで入学したかというと、気づいたら入っていたんですよ。別に目指していない。中学入試って、受けるのは小学生ですからね。将来の夢も何も無いですよ。世間も知らんし、仕事も知らんし。ただ勉強が出来たから、親が喜んでくれるから、なんかゲーム感覚でやったら得意だったから、そんな理由ですよ。
 
そりゃ入試の合格発表のインタビューでカメラを向けられたら「将来は東大に行って、官僚になりたいです」とか「お医者さんになりたいです」とか言いますよ。それが正解だって知っていますから。でも小学生だからね。隠毛も生えていないんだからね。そりゃ、10人に1人ぐらいは、きちんとしたビジョンを持っていて、その夢を大人になるまで持ち続けるだろうし、そういう子は隠毛も生え揃っているでしょうけれども、10人中9人は、ただ無意識に言うべきことを答えているだけ。
 
で、気づいたら入っていた進学校で、そこでの空気はやれ東大だ京大だ、今だったらハーバードだのコロンビアだの(国じゃなくて大学)となるでしょう。で、その時点で将来がすげー限定されているんですよ。大工になるとか夢にも思わないし、そういう道があるとも思えない。っていうか知らない。底辺校(嫌な言葉だけど、便利だから使う)の人が東大の夢を見られないように、進学校の人は大工の夢を見ることはできない。
 
小学生時代の得意な能力ひとつで、将来が限定されてしまうことの損失を嘆いているんですよ。勉強ができたっていうだけで将来が限定されてしまう。もったいない。今すぐ東大を中退して大工になったら、すごく幸せな人生を歩める人だっていると思うんですけれども、周りが許さないでしょう。まだ底辺校出身者が東大を目指す方が、認められる。周りも応援するからね。下から上へは応援されるけど、上から下へは非難される。
 
今は「起業」ってのが世間的に認知されてきているし、東大出身者で起業家って人も多いですが、ひと昔前は、社長さんに東大出身者はすごく少なかった。なぜなら、起業して中小企業の社長になることは、上から下へ、という価値観だから。許されないんですよ。まぁ、大工とかはもっと許されないですけれどね。
 
本来は最も優秀がやるべきである起業という仕事に、優秀な人が行きにくい。これは損失ですよ。優秀な人は、優秀な人ばかりの集団(省庁とか一流企業とか)に行きたがるけれども、そうじゃなくて、まんべんなく底辺業界(すいませんね、そういう言葉で)や、地方に広がるべきなんですよ。
 
話を単純にするために、東大出身者が一般よりも優秀でありリーダーシップもあるという前提で話をしていますけど。優秀なリーダーシップがある人が10人集まってグループを作ったって、そこで必要なリーダーは1人なんですよ。船頭多くして船、山に登る状態。もし、この10人が10箇所にばらけて、それぞれの場所でリーダーとして、多くの人を手足として活用して働いたら、全体の生産性はすごく上がりますよね。
 
だけど、その10箇所っていうのは「下」ですから、価値観として。中小企業であったり、地方であったり。だから、そこに行くルートが無い。行くことが応援されない。っていうか、妨害される。親戚縁者が泣いて止める。お世話になった先生から非難される。そこを突き抜けてまで行けというのは、無理ですわ。むりみですわ。やばみでつらみですわ。
 
日本にリーダーがいないという原因の一つは、これじゃないかと思います。リーダーたるべき人間の人生ルートが限られているから、そういう人たちがそういう人たちだけで固まってしまって、リーダーの立場にいることが出来ない。多くのリーダー予備軍が、優秀な人間が、限られた組織の中で飼い殺し状態になってしまっている。中央省庁でつまんねー仕事している僕世代の人とか、さっさとやめて、地方自治体の長にでもなったらいいと思いますよ。
 
そうじゃなくても、大工がやりたきゃ、大工になればいい。すごく優秀な大工になって、大工業界に革命を起こすかもしれないですし。そうじゃなくても、その人が幸せな大工人生を全う出来れば、それが一番いいじゃないですか。周りも、それを認めなきゃいけない。東大を出て大工になりました、っていう人を珍しがっちゃいけない。やりたいことが見つかるのが30、40歳の頃、なんていうのも普通だろうし。
 
僕の友達でもいましたわ。高校の時の親友で、彼は農家になりたいと言っていたんですよ。でも家が歯医者だから、歯医者にならないといけなくて、歯医者になったんですけどね。まさかその時は、僕の方が農家になるとは夢にも、本当に夢にも思わなかったけれども。なりたいとも、なろうとも、全く思っていなかったし。不思議なものです。
 
後になればなるほど、方向転換は難しいからね。進学校(高校)レベルの時に方向転換するのが一番楽だね。大学に落ちた振りするのが、一番楽だね。冒頭の記事に、小説家になりたいけど進学校に通っているから無理、という子の話がありましたが、そういう場合だったら、勉強できない振りをするのが一番いいよ。周りが納得するから。苦しいだろうけど、嫌だろうけど、プライド傷つくけど、それが良いです。下手に東大に受かったりしたら、周りが一層、納得しないからね。
 
周りは何としてでも東大に行かそうとするから「東大に行ったら、好きなことしていいから」とか言ってくるけど、嘘だからね。より一層、人生が狭まっていくからね。大学だけは行って、とか言われたら、北海道大学あたりに行きましょう。で、適当に生きましょう。距離が離れたら、自由感が増すからね。ましみだからね。それで小説家を目指せばいいし、また違う夢を追ってもいいし。夢があるなら、自我を強く持ってね。そんなとこ。がんばれー。
 
──【NEWS PICKUP】────────
 
午後出社か、リモートワークか、絶対出社かーー。台風一過でわかった社畜日本の現在地。
 
台風のたびに、この手の話が出てきますね。日本の場合、出社するというのは強固な文化で、宗教に近いです。ムスリムが何があってもメッカの方向に祈りを捧げるように、何があろうとも出社という儀式をしなければならないのです。必要のない出社を強要されたら、あ、宗教度が強いな、と思いましょう。
 
──【BOOK REVIEW】────────
 
左ききのエレン』
 
ここ数年で一番面白い漫画だったと思う。cakesっていうネット媒体で公開されて、リメイク版がヤングジャンプで始まったり、ドラマ化もするってさ。Kindle Unlimitedで全部、無料で読めます。cakesに入会してもいいし、Kindle Unlimitedでもいいし。
 
最初は、何、このクソみたいな絵は、と思いますが、まぁとにかく面白いから。おすすめー。
 
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