和噺

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マシュマロの噺

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        和噺   
                         R1/09/02
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マシュマロ実験という、有名な実験があります。
 
まず、子供たちを集めます。4歳ぐらいの、言葉が理解できる子供たちです。で、その子たちに「今、ここにマシュマロが1個あるね」と、机の上のマシュマロを見せます。で、「今、このマシュマロを食べてもいいけど、もし15分、食べないで我慢していたら、もう1個あげるよ」と言って、部屋に一人で置いておくんです。
 
子供は当然、マシュマロを食べたいですよね。だけど15分、我慢したら、もう1個もらえる。だけど、目の前のマシュマロは超おいしそうですからね。我慢できずに食べちゃう子供もたくさんいます。もちろん、中には15分、我慢して、2個目のマシュマロを手に入れる子供もいます。
 
この実験は、目の前の誘惑に負けずに我慢するという能力が、その後の人生にどう影響するか、ということを調べる実験なのです。その後、子供たちの人生を何十年と追跡した結果、4歳の時にマシュマロを我慢できた子供たちは、収入が多く地位も高い、平たく言えば「成功した人生」を歩む確率が高かった、という実験です。
 
この話は、自己啓発書とかでよく取り上げられます。目の前の誘惑に負けずに我慢しよう。努力を続けよう。そうすれば大きな成果が得られるよ、という文脈で使われます。
 
さて、ここからは僕の考えですが、こういう実験の話だと、じゃあ我慢することは人生の成功のために大切である、という結論になってしまうんですが、そこに一つ、条件を加えなきゃいけないと思います。それは「今の世の中ではね」ということです。
 
現代の日本や、アメリカや、ヨーロッパでは、という話です。資本主義社会であり、財産を投資して複利で運用するのが経済的に成功する最適解であり、暴力が封じ込められている社会であり、自然の脅威もほとんど無い社会であれば、マシュマロを我慢する子の方が成功する確率が高い、という話です。社会が変われば、マシュマロをさっさと食べちゃう子供の方が成功する場合もあります。
 
北斗の拳のような、ヒャッハーな世紀末社会だったら、どうでしょうか。世界が核戦争とかで壊滅的なダメージを受け、食料も満足に行き渡らない、そういう社会だったらどうでしょうか。その場合、おそらく、ためらいなく1個目のマシュマロを食べちゃう子供の方が、その後の人生で成功する確率が高いです。目の前の利益を即座に確定させることが、不安定な社会では最適解だろうから、です。
 
つまり、環境が変われば最適解が変わります。だけど環境っていうのは、そうそう変わるものではないから、普通は今、生きている環境が絶対のものだと感じちゃいます。たかが数十年しか続いていない環境が、永遠のものである、絶対のものであると感じてしまうのです。だけど、それは絶対ではない。環境は、いつ変わるか分からない。そのために、人間の「多様性」があるのだと、僕は思っています。
 
マシュマロを我慢する子、我慢できない子、それは人類の多様性であって、人類が全体として色々な環境で生きていけるように、ばらけた性質を持って生まれてくるのです。どんな環境であれ、どれかの個体が適応できるように、ということです。言いたいのは、そこに善悪の価値観が無いということです。「現在の環境では」、マシュマロを我慢する子が成功しやすいだけであって、それが「偉い」とか「優れている」わけではない。ただの違いだということです。
 
ふと思ったけど、「北斗の拳の世界の自己啓発書」って面白そうじゃない? 「人を見たら泥棒と思え」とか「マシュマロはすぐに食べろ」とか。その環境での成功法則を書くということで、今の環境が絶対的なものではないってことを、ギャグを交えて提示できると思う。それはまた、今の社会で日の目を見れない人の価値を、上げることにもなると思うんですよ。
 
北斗の拳みたいなフィクション世界でもいいけど、時代を変えてもいいよね。戦時中でもいいし、江戸時代でもいいし。価値観を相対化するっていうのは、幸せに生きるために、他者を認めるために、重要なんですよ。役に立たないと言われる人も「今の社会では」という枕詞をつければ、皆、相対化されます。幸せっていうのは、皆を認めること、皆が必要だと思うことから、生まれると思うのでね。
 
──【NEWS PICKUP】────────
 
アスリートに虫歯が多い理由
 
アスリートは普通の人よりも、歯磨きの回数も多いし、デンタルフロスもしているのに、なぜか虫歯が多い。その理由として、糖分の入ったスポーツドリンクを飲むことや、栄養補給のためのスナックバーを食べることを挙げています。
 
が、うーん、ピンと来ないなぁ。普通の人も、結構、間食はするんじゃないのかな。ちょっと思ったのは、アスリートって歯をくいしばることが多いでしょ。その圧力で、歯が痛むんじゃないのかな。一般人でスポーツドリンクをよく飲む人との比較とかも欲しいところですね。
 
──【BOOK REVIEW】────────
 
『幸せをつかむ4つの地図の歩き方』 ロバート・アレン著
 
色々な自己啓発書があるけど、僕はこれが一番好きです。シンプルに、必要なことだけ書いてあるし、実行しやすいと思うので。マシュマロの話も出てきます。現代社会で成功したいなら、良い手助けになると思います。
 
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