和噺

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学校のクーラーの噺

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        和噺   
                         R1/08/30
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この前、職業がどんどん専門化してくる、って話をしました。日本は、っていう言い方をするのは好きじゃないけど便利だからしちゃうけど、日本は専門家が尊敬を集めるじゃないですか。その道一筋のプロこそが尊敬を集める。逆に、いろんなことをやる、っていうのは良くないんです。だからNHKでも「プロフェッショナル仕事の流儀」とか放送するんです。
 
何か一つのことを突き詰めるプロフェッショナルの人は、それはそれでいいし、その人は働くのが楽しいからいいんじゃないですかね。でも、それを理想像として皆に押し付ける価値観ってのは窮屈だし、多くの人が幸せにならないですよ。
 
随分前だけど、「プロフェッショナル仕事の流儀」で、空港の掃除をしている女性を紹介していたんですよ。その人は、清掃員として飛行場(羽田だっけかな)の掃除をしていたんだけど、掃除が好きだから自分で道具とかも開発して、それはそれは綺麗にやるわけですよ。洗剤なんかも何種類も使い分けちゃったりして。冷水機、あるでしょ、ペダルを踏むと水がチューっと出るやつ、あれの飲み口のところを2時間ぐらいかけて鏡のように綺麗にしたりするわけですよ。
 
それを見ての僕の感想は「ああ、この人は掃除が好きなんだな」です。それはそれでいいじゃないですか。大好きな仕事に巡り合えて、その人はとっても幸せだろうし、良かったね、って話です。だけど、それを生き方・働き方の理想像のようにして取り上げるのは、ちょっとよろしくない。そりゃ、人を使う側(経営者・オーナー)からしたら、従業員みんながこの人のように「プロ意識」を持って掃除してくれたら、どんなに良いことか、と思うでしょうよ。
 
同じ給料だけれども、自発的に深く深く、その業務を極めていって、誰も辿り着けないところまで到達する。従業員みんながそんな風に働けば唯一無二の競争力を持つ企業になるし、誰も太刀打ちできない。だけど、一つのことが好きで好きでたまらない人って、そんなにいないんですよ。プロを持ち上げるのは、純粋にその人がすごいね、というだけの話であって、それで止まるべきなんです。それが「価値観」に昇華されてしまうと、苦しむ人が大勢出てくる。
 
言わば、プラモが好きで好きでずっとガンプラ作っている人と、空港の掃除の人は、特に変わりはないんですよ。ただ一つのことが好きで、大好きなことに巡り会えた、集中力の高い人、ということです。だから、ああ、良かったね、ぐらいの話で終わるべきであって、みんなに「この掃除の人は素晴らしいですね、見習いましょう、この人のように仕事をしましょう」という話じゃない。それは、大半の人はできない。そして、そのことに劣等感を抱く必要も無いのです。
 
なんか、こんな話をしたかったんじゃないんですけどね。。「学校に冷房をつける話」をしようと思っていたんですよ。。で、それに絡めてプロとDIY(素人)の話をしようと思ったのに、なんか掃除のおばちゃんの話になっちゃいました。。。
 
「プロフェッショナル仕事の流儀」の対極にある概念が、DIYです。Do It Yourself。「自分でやるよ」ってことですね。日本では素人仕事と言われて、嫌われる価値観です。DIYの本場はアメリカで、あの国はフロンティアで開拓していった土地ですから、そもそも自分でやらざるを得なかったのです。開拓(というかインディアン殺戮だけど、それはまた別の話)した先には、プロがいないわけですから。みんな素人で、みんな自分で何とかせざるを得なかった。それがDIYの文化を生んだのでしょう。
 
DIYは、楽しいです。そして意外に出来ます。思えば、日本だって江戸時代までは百姓でも自分で家を建てたりしていたんですよ。薩摩の武士なんかも、百姓して、大工して、時には戦って、みたいなのが普通なんです。田舎ほど分業化していないから、なんでも自分でやる、やらざるを得ない、という発想になります。逆に都会ほど人が多いから職業が専門家して、仕事はプロに頼むべし、素人は仕事に口出しするな、みたいな文化になります。江戸と薩摩は、都会と田舎の文化の違いです。
 
江戸は同時代のアメリカより都会ですからね。そういう文化が育まれたのでしょう。知らないけど、中国とか欧州はどうなのかね。都市化が進んだのは日本より早いから、分業も日本より進んでいてもおかしくないけどね。そういう意味で言えば、最も分業が進んでいるのはインドでしょうね。カースト制度ってのは、分業が固定化したものですから。古代インダス文明から続く何千年もの都市文化が生み出したのが、カースト制度です。掃除をする人は、一生、掃除しかしない。究極です。
 
でね。学校の冷房の話ですよ。暑いじゃないですか(最近は涼しいけど)。小学校に冷房をつけようという話になって、じゃあってんで学校が業者に見積もりを取るんですよ。そしたら何千万とか、下手したら億ぐらいの金が必要になるんですと。で、そんなお金は無いから冷房の話も中断された、立ち消えになった、みたいな話を聞いたんですわ(ネットニュースとかで)。
 
多分、業者に頼んだら、全部を一体化した空調システムを作るという話になると思うんですよ。職員室で全ての冷房を管理できて、天井裏にダクトを通して、大型の冷房を各教室の天井にセットして、みたいな。そりゃ数千万かかるでしょうね。そんなことじゃなくて、できることからやればいいじゃない。
 
DIY的な発想だったら、教室にジャパネットとかの12畳用のクーラーを2個つけてみて、どうなるか、ぐらいから試したらいいじゃないの。で、窓から日差しが差し込んだり、断熱性が悪かったら、プチプチの断熱シートを窓に貼ればいいじゃない。ビニールハウス用の遮光ネットとか、すだれとか、窓の外に置けばいいじゃない。教室の端にも冷風が届くように、扇風機(1500円)も2つぐらい置けばいいじゃない。おそらく、一つの教室あたり50万円ぐらいで立派な冷房システムが出来ますよ。
 
そしたら、20クラスにやるとしても、1000万円ですよ。なんで数千万とか1億みたいな話になるのか、わからない。それは、完璧を目指すからですよ。完璧を目指す業者(プロ)に頼むからですよ。学校全部を、廊下もトイレも全部含めた、完璧な空調システムを作ろうとすれば、そうなる。プロは、そう考えます。だってプロだから。0か100か、になるんです。じゃなくて、とりあえずできる範囲で30ぐらいを目指そうよ、っていうのがDIYの発想です。
 
専門家に頼もうとする前に、自分でやればいいじゃない。そして、生徒も巻き込んでやればいいじゃない。冷房をつける、それも出来るだけ安い予算で目標を達成するっていうのは、立派な仕事だし、そのプロセスを生徒と共有すれば、とても面白い学びの場になると思いますけれどね。という話がしたかったのに、なんか掃除の人の話になっちゃった。ところで一週間ぶりに山奥に帰ってきましたよ。家の周りの草が伸びていてビビる。また明日。チャオ!
 
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