和噺

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食料自給率の噺

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        和噺   
                         R1/08/18
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こんなメールをいただきました。
 
NHK時論公論で、食料自給率が低下する一方で深刻な状態であるという解説員の話がありました。あの論調を聞いていると、不安になる人も多いと思いますが、
以前、国のカロリーベースでの計算方法がそもそもおかしいと「都会育ちの田舎暮らし」の中で書いておられたように記憶しています。
 廃棄食料を減らすだけでも、自給率はかなり改善されるという意見も聞きますが、9年近く経過した今、機会があればもう一度ご意見をお聞かせ願えればと思います。」
 
ご質問ありがとうございます。というか、9年前のメルマガの話を覚えていてくださって光栄です。僕は完全に忘れていました。まあ、書いたことは忘れていても、基本的な考えは変わっていないと思うので、おそらく9年前に言ったことの繰り返しになると思いますが、考えてみましょう。
 
結論から言えば、食料自給率とかどうでもいい。意味のない数値だと思っています。まず、9年前の僕も言及しているようですが、食料自給率にはカロリーベースと生産額ベースの2種類があるんですね。カロリーベースってのは、文字通り、消費カロリーのうち、どのくらいを国内自給できているかっていう数値ですが、例えば「油」はハイカロリーであり、キュウリなんか0キロカロリーでしょ。野菜を自給できていても、カロリーベースの自給率は上がらないですよね。
 
極端な例えをすれば、サラダ油ばっかり生産していたら、食料自給率のカロリーベースでは100%を簡単に超えるわけです。だけど、人間は油だけで生きられないですよね。野菜も食べないと死ぬ。そもそも、栄養素とかを無視したカロリーベースの計算なんて、何の意味があるんだか分からない。この数値を計算して公表することを仕事にしている天下りのお役人さんたちが生計を立てる、ぐらいの意味しかないんじゃないでしょうか。
 
生産額ベースの計算だって、現代では「嗜好品」としての食料だって、たくさんあります。例えば、フランスから輸入されてきた本格的なチーズは高価ですよね。これは、嗜好品です。必需品じゃありません。でも、価格としては高価だから、生産額に占める割合は大きくなります。逆に、日本でも生産できるけど、輸入した方が安いから輸入しているという例もあるわけです。トンガのカボチャみたいに。食料を生産できないから輸入している、という状況でもないわけですよ。
 
実体経済がそういう状態なのに、生産額ベースの食料自給率がどーのこーの、ということに、何の意味があるのか分からないのです。これも、そういう数値を公表することで「お仕事」をゲットしている人がいるんじゃないの、と勘ぐってしまいますね。
 
カロリーベースであれ、生産額ベースであれ、食料自給率に、さしたる意味は無いと思っています。だって今の時代、エネルギーの方が大切じゃん。石油がなければ、食料だって生産できないじゃないですか。コンバインだって動かないし、食料の輸送はガソリンがなきゃ出来ないですよ。その石油をほぼ外国に頼っている状態で、食料自給率を気にする意味が分からないです。
 
さらにそもそも、これからどんどん国境が無くなっていく、また無くなっていく「べき」時代に、鎖国のような自給自足数値である「食料自給率」にこだわることは、時代の流れに反しています。いや、近くで生産したものの方がフードマイレージが低いじゃんと思われるかもしれませんが、少量のものを国内で流通させる方が、外国から輸入するより、意外とエネルギーは高かったりするのです。
 
フードマイレージって「輸送量×輸送距離」であって、遠くのものの方がエネルギーがかかっているはず、という超単純な考えです。だけど、トンガから船便でカボチャを大量輸送した方が、北海道からトラックで運ぶよりも、カボチャ1個あたりにかかる輸送エネルギーは低かったりします。別に計算してないけど。たぶん、こういうことを偏執的に調べているブログとかあるはずだから、興味ある人はググってみてね。
 
そういうエコの面から言っても、国内生産にこだわる必要なんて無いのです。で、話を戻すけど、食料もエネルギーも自給できるようにしようなんていうのは、世界との繋がりを断ち切り、孤立につながる考え方です。世界レベルで効率の良い食料生産、エネルギー生産を行い、国の枠を超えて流通させることこそが、世界平和につながる道です。
 
エネルギーや食料を他国に依存することは、逆に言えば、皆が繋がりあって、争いが起こらなくなる道につながるんですよ。お互いに相手が必要だから、仲良くしよう、ということになります。世界は今後、そうあるべきだと思うから、食料自給率なんて低くていいじゃん、あとエネルギー自給率だって低くていいじゃん、と思います。
 
でも食料自給率にこだわる人は多いです。その原因は「不安」だと思います。「食料」という、本能レベルで必要だと感じるものを、訳のわからん人(外国人)に握られているってことへの不安です。「エネルギー」になると、本能的な不安は感じにくいです。電気とかガソリンとか、ホモ・サピエンスの本能で理解できるレベルを超えているから。だからエネルギー自給率って、特に話題にならないんですよ。本能的な不安を呼び起こさないんです。
 
食料自給への不安は、原始的な本能の反応だから、意味のない妄想です。カボチャの生産者がトンガよりも北海道の方が安心するってことにも、意味は無いです。北海道の人だって他人でしょう。トンガ人と同じですよ。言葉(日本語)が通じるから安心する、というぐらいの、気持ちの問題です。僕は、知らない生産者のものを産直市で買うよりは、イオンが管理しているトンガの農園の方が信用できますけどね。
 
ってことで僕の結論としては、食料自給率の問題ってのは、心の問題です。「食料という大切なものを知らない人(外国人)に任せている」という不安から生まれた問題です。その不安を解消する答えは、自分と家族が自給自足できる体制を築くしかありません。たとえ日本が世界から孤立して、石油も輸入できなくなって、化学肥料もなくなって、電気もない、それでも生きていたいから自給自足できる体制を作っておこう、というのなら分かりますけどね。
 
でもそれって、すでに世界が滅びていますよね。北斗の拳状態ですよね。そうならない努力をすべきであって、そういう状態になった時の心配をすることの意味はないと思います。死後の世界を心配しているようなものです。それよりは、他国と仲良くして、きちんとした品質のものを、輸送エネルギーが低い状態で輸入すること。その方が大切。で、そうすると食料自給率は下がるかもしれないけど、別にいいじゃん、って感じです。
 
さて、ここで終わりにしてもいいんだけど、あと一言。食料自給率を回復させろというのとは別の意味で、国内の耕作放棄地は復活させるべきだし、農業生産もきちんとするべきだと思います。なぜかというと、田んぼには食糧生産のみではなく、治水とか景観とか文化継承いう意味もあるのだし、一概に経済論理に当てはめて、外国との価格競争で負けるからやらなくていい、ってものではないからです。
 
将来的には、日本と後進国(嫌な言葉だけど、しょうがないから使う)の賃金格差も縮まってきて、「日本で食料生産した方が経済効率がいい」という状態は来ると思います。数十年ぐらい先の未来に。その時に、耕作放棄地を復活させたりする手間は膨大だし、ノウハウも減少している、生産者も少なくなっている。それよりは、今の状態を、税金を投入してでも維持させた方が良いと思います。
 
また、地方創生という意味からも、守らなきゃいけない。経済で採算が取れないからやめるっていうのは、短絡的すぎる。経済ってのは「気分」ですから、上下する訳です。その上下の波をなだらかにするのが、政府が介入するという意味。目先の価格の上下にどーのこーのではなくて、数十年ぐらいのスパンで、日本をどうするかって考えると、東京一極集中は解消したいし、地方を疲弊させてはいけないから、とりあえず守らなきゃいけない。
 
っていう文脈において、僕は農業に補助金はつけても良いと思うし、耕作放棄地も減少させるべきだと思います。だけど、食料自給率は、どうでもいい。そんなとこかな。考え方の過程は違うけど、耕作放棄地とか補助金に対する結論は「食料自給率を上げろ」という人と、たぶん同じになっちゃうんですよね。ま、そういうのは良くあることです。呉越同舟です。
 
ご質問ありがとうございました。こういう感じの質問をいただくと、テーマを考えなくて良くて楽なので、どうぞ送ってください。書くこと無いと、夢日記とか書き出しちゃいますからね。
 
──【NEWS PICKUP】────────
 
 
偏差値55で「医学部に合格する人」たち、なぜか急増しているワケ「チャンスは今」かもしれない
 
なんつーか、そりゃ昔はいろんな知識が必要だっただろうし、膨大な知識を暗記することが医者になる条件だった、ていうのは分からなくもないけど。医者への適性って、それとは別のところでしょう。もっと対人の能力、コミュニケーション能力とか、患者さんを安心させる能力とか、何より人を救いたいという気持ちとか、そういう方が重要じゃないのかなと思う。
 
だから、医学部にバカ(暗記ができないという意味での)でも入れるのは、良いことでしょう。医者の門戸は、もっともっと広げるべきだと思う。今までのように「暗記が得意だから医者になる」って方が、おかしくない? 医者への志がある人は、多少暗記能力が低くても、試験に弱くても、医者になれる道がある方が良いです。だって今の時代、知識は調べりゃすぐ分かるじゃん。ググって解決できない問題を解く能力の方が大切なのだから。
 
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真っ当な内容だと思いました。内容を一言で言えば「全世界を対象した手数料の安いインデックスファンドに投資しろ」です。以上。そして、それは僕も賛同します。日本株よりも世界分散させた方が絶対いいと思いますよ。事務的に淡々と、毎月の収入から天引きしたお金をインデックスファンドに積み立てていくことね。それだけです。どんなファンドがいいか、っていうのも本には書かれているので、投資したい人は読んでどうぞ。
 
──【アンケート】──────────
 
読者の方からメールをいただきました。
 
「メルマガでアンケートして欲しいことがあるんですが、気が向いたらお願いできませんか?都会育ちの〜から9年? 読者の皆さんは、その後どうなったのかなー、と。田舎に移住したのか、そのままなのか、それとも都会から更に大都会に移住したのか、、、ちょっと気になったので良かったらやってほしいです。」
 
ですって。よかったら皆さん、答えてください。自由記入で!( ´∀`)
 
 
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