和噺

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努力の噺

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        和噺   
                         R1/08/16
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我々、日本人の常識として、努力は必ず報われるとか、努力することが大切であり結果は二の次、みたいなところ、あるじゃないですか。
 
例えば、学校で全然努力せずに勉強のできるA君と、努力するけれどもなかなか結果の出ないB君がいるとしましょう。多くの場合、評価され人々の好感を得るのは、努力家のB君です。たとえ結果が伴わなくても、一生懸命努力していれば、いつか必ず報われるよ、みたいな。他方、A君は不真面目な態度だけど、ちゃんと結果が出ている。こういうのは、なんかズルしているんじゃないのとか、もっと真面目にやりなさいとか、言われるでしょう。
 
この努力信仰の根っこには、農業があると思います。米作りね。世界には色々な民族、文化があって、それぞれ「どうやって生きていくか」という手段が違います。日本みたいに、田んぼを作って米を育てる文化もあれば、家畜を育てて肉を食べる文化もあれば、狩猟採集する文化もあれば、商業で物と人とを結びつけるという文化もあります。で、それぞれの環境や生き方によって、行動の最適解が違うのです。その最適解こそが、「善いこと」という各文化の価値観になります。
 
米作りって、とにかく真面目に努力することが必要なんですよ。まず田んぼを作るのが重労働です。田んぼは水平じゃなきゃいけません。しかも1回作ったら永久に使えるかといったら、そうでもなく、自然の大地ですから、どっかが下がったり、歪んだりするんですよ。それを何年かに一度、直さなきゃいけない。常にメンテナンスをしなきゃいけない。
 
そうやって大変な思いをして作って管理している田んぼに、水を引かなきゃいけない。水は必ず高いところから低いところに流れますから、きちんとした水路を作らないといけない。どっかで水路が上り坂になってはいけない。時には、何キロも遠くから水を引くこともある。そうやって、やっと田んぼに水が張れる。
 
田植えも、村人総出で1日で終わらせないといけない。自分一人だけでやれば、田植えだけで一週間ぐらいかかるとしましょう。そうすると、生育の差が出てしまうわけです。同じ田んぼで生育に差が出ると、一気に水を抜いたり、入れたりという、水管理の仕事ができない。だから、米の田植えは村人総出で行わないといけない。他人と足並みを合わせて協力しないといけないんです。
 
そういう作業に、特別な才能は要りません。あえて才能というのであれば、コツコツと同じことを同じように真面目にやる才能が必要です。そして、他の人と協力し、同じことをする必要があるのです。これが、米作りに求められる「行動」なのです。真面目に、同じことをやる。それが「善」の価値観になります。
 
では視点を変えて、商業で生計を立てている人なら、どうでしょうか。才能のある商人が、口八丁手八丁で事業を拡大するということは、あり得ます。その場合、口が上手いことは「善」の価値観になります。議論で相手を説得することも、必要な行動になります。そして、成功した彼は多くの人を雇い、一族の繁栄の礎(いしずえ)となるでしょう。他の、商業の才能が無い多くの人にとっても、ありがたいことです。その場合、個人の才能を伸ばすことが「善いこと」になります。
 
日本から突出した才能がある人材が出てこなかったりする根本には、米作りの価値観があります。米作りでは、突出した才能は必要なかったんですよ。ていうか、米作りに突出した才能なんて、無いんですよ。誰でもできるレベルの作業を真面目にやり続けることだけが、必要なんです。
 
もう一つついでに言えば、米作りは、それだけ努力しても、最後には台風で全滅したりすることもあります。最後は運ゲーの部分があるんですよ。だから、諦めるというか、しょうがないよね、みたいな価値観も生まれます。それが商業のように、人間だけが関わる文化、つまり「都市文化」の場合は、最後まで何とかできることがあるんですよ。相手が自然じゃないから。
 
っていう感じで、真面目・出る杭は打つ・コツコツ続ける、みたいな価値観が日本に生まれました。問題なのは、それが、今の世界の主流である「商業文化」に適していない、ってことですね。「ものづくり」だったら、まだいいんですよ。米作りの価値観が適合しますから。あと政治も向かないね。「外交」とか特に日本がダメなのは、外交の最適解と、米作りの最適解が違うことです。外交とか、いかに相手を騙すかとかいう世界でしょうから。真面目が損をする世界なんですよ。
 
話の流れで、明日は外交の話をしますね。ではまた。チャオ!
 
──【NEWS PICKUP】────────
 
勾留中死亡の米富豪、首数カ所を骨折か 専門家「自殺ならまれ」
 
すごいよね、このニュース。完全にアメリカドラマじゃん。勾留中に殺されるとか。で、黒幕の大統領とか王室とか。ハリウッド映画とかアメリカドラマって、普通にアメリカの日常を描いているだけなんだね。
 
──【BOOK REVIEW】────────
 
『絶対に死んでしまう私たちがこれだけは知っておきたい健康の話』
 
鍼灸の先生が書いた、東洋医学をベースにした健康の話。しごく真っ当な内容で、面白かったです。寝ることが一番大切ってメッセージ、たしかにそうですよね。寝ないと、食べたり運動する元気が出ない。まずは寝ることから。寝て、食べて、動く。という順番。
素晴らしかったのでオススメです。著者さん(若林理砂さん)の他の本も全て、アマゾンで買ってしまいました。変にナチュラル系じゃなく、現代の文明でカバーできるものはガンガン使え、っていう考えも好きです。
 
──【どうでもいい噺】────────
 
『賛否両論』ってレストランがあることを最近知ったんですよ。有名なんでしょ?笠原将弘さんのレストラン。おそらくパイナップル入りの酢豚とか、じゃがいもの味噌汁とか、リンゴが入ったポテトサラダとかが出てくるんでしょうね。あと栗ごはん。
 
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