和噺

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猫の噺

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        和噺   
                         R1/08/14
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山奥に家を建てたのは8年前のこと。たしか2011年の6月ぐらいだったと思います。街中に借りていた町営住宅から意気揚々と引っ越したはいいのですが、僕ら家族より先に住み着いていた奴らがいたんですよ。ネズミです。
 
彼らは、もともと山で暮らしていたんでしょうね。で、見ていたら人間が素敵な家を建て始めたものだから、こりゃありがたい、ってんで一足先に住み出したのでしょう。天井裏とかで、チューチュー言っているんですよ。
 
「おやおや、ネズミさんは我が家にホームステイしているのかい?」なんて呑気に思えるはずもなく。嫌だからホームセンターでネズミトラップみたいなのを買ってきましたよ。毒エサとか、ベタベタのシートで捕まえるやつとか。毒エサはともかく、ベタベタシートは、普通にネズミが生きたまま捕まるんですよ。夜に仕掛けて、朝、チューチュー言ってるベタベタのネズミがシートの上にいるんですよ。
 
あれ、どうするのが正解なんですかね? シートにくっついた、生きているネズミ。折り畳んでゴミ袋に入れるのがいいんですか? でも、ゴミ袋の中で何日も生かすのも可哀想じゃないですか。悩んだ挙句、最終的には焚き火に放り込んだりしましたけど。
 
実際、あまり気持ちのいいものじゃないですよ。毎日、1〜2匹のネズミが獲れ続けるし。どっかで湧いて出ているのか、獲れども獲れども、いなくなる気配が無い。夏の間、毎日ネズミを獲っては燃やし、獲っては燃やし。なんか、これは地獄に落ちかねない所業だなと思ったので、代替案を考えました。
 
猫です。
 
猫を飼えばネズミはいなくなる、とは冗談半分に思っていましたよ。でも信用できない。だって猫でしょう。ニャーニャー言ってる、あいつでしょう。可愛いけれど、役に立つとは思えない。「猫の手も借りたい」みたいに、役に立たない動物の代表格みたいなとこ、あるじゃないですか。猫。でもまあダメ元だと思って猫を飼い始めたんですよ。
 
ところで我が町には「犬猫回収日」っていう、どストレートなネーミングの日が月に1回、あります。この日に町民が、処分したい犬や猫を保健センターに持ってくるんですよ。なので、その日に行けばタダで猫をもらえるわけです。行ってみたら、兄弟猫だという5匹の子猫たちがいました。5匹引き取るわけにもいかないので、なんとなくフィーリングで一番元気そうな猫をもらってきました。そんなこんなで、我が家に猫が来たわけです。
 
貰った時は生後1ヶ月ぐらいで、手のひらサイズの子猫でした。最初の晩こそニャーニャー鳴いていたけど、すぐにそこらへんを走り回るようになりました。で、その結果、目に見えてネズミが減ったのです、というか逆に目に見えなくなったわけだけど、たしか1ヶ月ぐらいで全くネズミの影がなくなりました。
 
すげえな猫、と思いましたよ。意識的にエサを少なめにして、半分はネズミとかで自給自足するように言い聞かせていたんですが、ちゃんとどこからか、獲ってくるんですよね。たまに、でかいモグラが家の前で死んだりしていますもん。うちの猫の仕業です。なんか、赤い小さな哺乳類(たぶんネズミの子)をカジカジと食べているところとか目撃して、うわ、こいつ引くわ、とか思ってました。
 
うちの猫は、なかなか優秀でして。ネズミもよく取る、モグラもよく取る、カエルは虫を食べてくれるから獲ってほしくないんだけどカエルも獲る。今までで一番でかい獲物は、ウサギですね。2回、獲ってきましたよ、普通にでかいウサギ。で、車の下で食ってました。引くわコイツ、と思いました。
 
猫パトロールのおかげで、我が家はムカデもゴキブリも、ほとんど出ませんでした。田舎暮らしをするのなら猫は必須ですね。あいつがなんで人類に飼われていたか分かりましたよ。可愛いよりも、役に立つほうが、はるかにデカイ。犬は犬で役に立つけど、猫も猫で役に立つ。うちではペットというよりも、仕事をする動物として犬と猫を飼っています。
 
ところが去年ぐらいから、うちにムカデがよく出るようになったんですよ。猫、サボってんじゃないのかと思ったら、我が家の猫も寄る年波には勝てずに、動きが鈍ってきている。昔はいつでも家の周りをウロウロしてパトロールに精を出していたのに、最近は軽トラの荷台で日向ぼっこばかりしています。だからムカデが家に入ってくるようになったんですね。逆に、ムカデが出てきたことによって、今まで猫がいかに仕事をしてくれていたか、改めて感じました。
 
ま、猫に感謝するのはいいのですが、このままではムカデもネズミも増えて困る。至急、新猫を手に入れなくては。うちの近所に猫が30匹ぐらい集まってくる家がありまして、その人に「今度、子猫が産まれたらください」と言ったら、2週間ぐらいで連絡きましたよ。産まれた、って。9月に入ったら、我が家に新猫を導入するつもりです。
 
旧猫は旧猫で、もう私の仕事は終わったとばかり、だいたい寝てます。この猫、あまりに人懐っこいので、訪問者には珍しがられます。初対面の人の肩に乗っかりますからね、なんか変わった猫です。もう役には立たないけれど、余生をのんびりと過ごしてくれることを願っています。
 
──【NEWS PICKUP】────────
 
タピオカに「1万年の歴史」 その栄養価を侮ってはならない
タピオカってキャッサバのデンプンなんだって。知らなかったわ。いや、なんかで読んだ気もするけど忘れてたわ。「栄養価をあなどってはならない」っていうから、栄養があるのか、と思ったら、逆に栄養(糖質)が多いから太るよ、って話だった。カロリーがあることがいけないこと、ってのは現代社会の常識なのかな。「カロリーたっぷり!」って謳い文句は聞かないもんね。
 
──【BOOK REVIEW】────────
 
『日本衆愚社会』 呉智英 著
ザ・知識人、呉智英さんのエッセイ。世間の人間は物知らずのバカばかり、という感じのテンションが素敵です。この人の言う「選挙権を免許制にする」ってのは、一理ありだなと思ってます。そもそも民主主義は教育なくしては成り立たないのに、全く教育をしていないからね。学校で政治について教えるならいいんですけど、やらないからね。面白い本です。おすすめ。知識は、物を見る目を変えてくれます。キンドルで読んだのでプレゼントは無しの助。
 
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