和噺

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葉っぱの噺

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        和噺   
                         R1/08/08
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8月8日ですわ。葉っぱの日ですね、多分。だから葉っぱという漠然としたテーマで書いてみましょうか。
 
なんか、田舎暮らしをすると「暇」なんじゃなかろうか、と思われるでしょうね。周りにお店も無いし、人間がいないし。今の時代、インターネットがあれば漫画とか映画とかのコンテンツは田舎でもすぐに手に入るけれども、それでもリアルな体験はやっぱり都会にはかなわないだろう、と。田舎暮らしの環境は良いけれども、そういう刺激の無さが嫌だね、という思いはあると思います。
 
ですが、こういうことも見る目を変えれば、すぐ変わる。田舎に面白いものが無いと思う人は、面白いものが見えていないだけなんです。見たことないから。
 
田舎には自然があります。この自然ってやつ、見てみると本当に面白いんですよ。草もいろいろな草があるし、虫もいろいろな虫がいる。田舎で、家の周り10メートルのことを全て把握しようと思ったら、大変ですよ。そこに来る虫がどういう風に生きているのか、鳥たちの生態はとか、掘り下げるとキリがないです。
 
家から一歩も出ないで、庭の絵とかをずっと書いている有名な画家がいたよなと思って「画家 家から出ない」で検索したら熊谷守一さんだと出てきました。池袋の近くに住んでいた画家さんで、30年間、家から出なかったそうです。引きこもりですね。で、庭で自然観察していたそうです。で、その絵を描いていた。
 
わかりますよ。自然って面白いから、本当に家から出なくても大丈夫なんです。庭(自然)が無けりゃダメだろうけどね。部屋に引きこもっている人が可哀想だと思うのは、そこにあるのが人工物だけだからです。ゲームとか漫画とか。人が作ったものではない自然物があれば、世界は無限に広がるんですよ。猫の額ほどの庭でも、30年、飽きることのない興味を駆り立ててくれるのです。
 
我が家は10ヘクタール(3万坪)あるんですが、自分の敷地の自然を把握しようと思ったら、何年かかることやら。てか無理ですね。山奥に住み始めた当初は、ここにある全ての草木の名前、虫の名前を知ってやろうと思って図鑑とか買ったんですが、諦めました。多すぎるから大変。あと、そこまで自分は興味ないなと思ったし。僕の自然理解は「草」「木」「虫」くらいの分別で十分だなと思ったんです。
 
虫もね、「その日しか見ない虫」がいるんですよ。普段は見ない小さい羽虫が大量発生していたりして、ああ、今日は「こいつの日」なのか、と。そして別の日には茶色い毛虫がたくさん道路を横断していたりして、ああ、今日は「こいつの日」なのか、と。どういうタイムサイクルか知らないけど、そしてどうやって連絡しているか知らないけど、同種の虫が特定の日に大量発生するってことは、よくあります。そして多分、こういうことも誰も把握していないんじゃないかと思う。
 
四国の山奥にいる小さな羽虫は、そりゃ図鑑には載っているだろうし、新種じゃないだろうけれども、そいつの生態ーー例えば何月何日に一斉に羽化して交尾しているのかとか、それは毎年のことなのかとか、それとも隔年か、三ヶ月おきなのか、そんなことは地球上の人間、誰一人として知らないと思うんですよ。それを興味を持って調べれば、人類で初めて、その虫の生態を把握したことになるんですよ。すごくないですか、そういうの?(僕は興味ないけど)
 
さらにそれが複合的になって、じゃあその羽虫はどの草を使って羽化しているのかとか、土壌がどういうところに生息しているのかとか、世界がどんどん広がっていく。僕の知り合いの知り合いぐらいの薄い関係の人で、四国の蛇を研究している人がいるんですが、どうやら四国の蛇を研究しているのはその人だけらしいんですよ。いろんなところで蛇を捕まえてるけど、一人だから限界がある。だから、道路で轢かれた蛇がいたら、写真にとって送ってほしい、みたいなことを言われたんですよ。
 
道路で轢かれた蛇の写真を集めたら、この時期にこの辺で蛇が活動している、というのが分かる。彼はそのデータを集めているんです。(ちなみに、研究機関とかの人じゃなくて、一般の人の趣味です)自然ってのは、そんなことすら分かっていないんです。誰も、見ていないんです。興味が無いんですよ、四国の蛇の生態に。
 
先日、札幌のナメクジ記録が役に立ったっていうニュースがありましたよね。説明すると、標高200メートルの円山に毎日、同じ時間に登っていた人が、どうも見慣れないナメクジがいると思って、その出現を記録にとっていたんですね。そのナメクジは外来種でして、生態把握のために、この記録がすごく役に立ったという話です。市民による科学です。
 
別に外来種じゃなくてもいいんですよ。ただのナメクジだって、誰も知らないんですよ。草のことだって、誰も知らないんですよ。それが何の役に立つか分からないけど、立つかもしれない。でも、立たなくたっていいじゃない、それに興味があれば。
 
別の話で、それは確かイギリスだったと思いますが、近所にカモメが巣を作っていて、その卵を観察して、卵の殻の厚さを測っていた人がいたんですよ。何十年も。頭がおかしいと思いますが、まあ好きだったんでしょうね、卵の殻の厚さを測るのが。
 
そしたら何十年のうちに、卵の殻がどんどん薄くなっていることに気がついた。原因は環境汚染によるものであり、なんとか環境ホルモンみたいなのが生態系に影響している証拠になった、とかいう話があるんですよ。すいません、裏も取らずに超あやふやに話していますが。イギリスじゃなくてフランスかもしれないし、カモメじゃなくてハトかもしれませんが、その辺はご愛嬌です。
 
こういうことって、何の役に立つかも分からないから、大学とかで研究しない(できない)と思うんですよ。でも、すごく必要なことだと思うんです。そこに住み続けて、自然を観察し、データをとる。すごく大変で、すごく大事なことです。僕はやれないけど、それをやれる人もいるんですよ。毎日ナメクジを記録したり、殻の厚さを測れる人が。こういう人は、ぜひ田舎に住んで、何か好きなことに励んでほしいと思います。
 
何も好きなことがない、やりたいことがない、っていう人は自然を見たら良いです。人が作ったものなんて、所詮、誰かの脳内で考えられたものですから、底が浅いんですよ。面白くない。自然の方が面白い。尺取り虫の動きとか、面白いですよ。毛虫の動きとかも面白いですよ。っていうか、そもそも虫が羽化する原理って分かっていないらしいですよね。芋虫が蝶々になる時、一回、蛹になりますけど、中身はドロドロになっているんですよ。何それ? 記憶とか受け継がれるの? どういう仕組み?
 
田舎暮らしは暇だと思っている人は、自然を見る目が無いだけです。なんか葉っぱの話をするつもりで、葉っぱ一つでもじっくり見れば面白い、みたいに繋げるつもりだったんだけど、主に虫の話になったね。6月4日に書けばよかった。また明日。チャオ!
 
──【NEWS PICKUP】────────
 
水の事故から子どもを守るには 5歳の息子を亡くした両親の軌跡
 
夏休み。お盆。田舎に行って川遊び、海遊び、という人も多いと思いますが、必ずライフジャケットを付けましょうね。親世代(僕の世代)が子供の頃はライフジャケットをつける習慣がなかったから、そんなもん無くても大丈夫だ、と思うかもしれませんが、必ずつけるべきです。こういう不幸な事故を起こさないためにも。
 
あと、川の水は、上流で雨が降ったらすぐに水かさが増しますから、気をつけて。その場所では晴れていても、ググッと、ほんの数分で増えることもありますので。気をつけて楽しみましょう。
 
──【BOOK REVIEW】────────
 
「お金のはなし」ひろゆき
 
2chを作ったひろゆきさんの、お金の話。エッセイみたいなやつ。軽くて納得できて、いいですね。ベーシックインカムは僕も賛成。内容を一言で言えば「考え方を変えれば、お金の心配なく、楽しく暮らせるよ」ってことです。真面目にお金のことで悩んでいる人に、おすすめ。一つの解決策になると思います。キンドルなのでプレゼント無しの助。
 
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