和噺

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最良選択問題の噺

都会から田舎へ移住した人と会う機会は、まぁまぁよくあるんですが、結構僕にとって驚きなのが「他の田舎(自治体)を見ずに移住してきた」という人が多いことです。

僕は東京出身なんですが、田舎に移住するにあたって、かなり下調べをしました。実際に現地を訪れて、役場の人とかに案内してもらった市町村だけでも、30ぐらいはあると思います。その中で、今住んでいるところが一番いいと思ったから、移住したわけですけど。

なんか、そういう人ってあまりいないみたいです。他は見ずに、ピンポイントで移住という人が意外と多い。

その原因として思うのは、多くの方は「田舎はどこでも似たようなもの」と思っているんじゃないでしょうか。田舎だったら、狭い日本どこでも同じ、空気や水はきれいだろうし、人は少ないし。みたいな。

だから「田舎暮らしの〇〇」みたいな形で、田舎って十把一絡げに語られると思うんですよ。逆に、「都会」は千差万別だと思っているでしょう。東京と大阪は違うし、札幌と福岡も違う。だけど、田舎はどこでも似たようなものだ、と。

だけど実際は、田舎の方が千差万別なんですよ。それは県民性というレベルじゃない。例えば、谷のこっちと向こう側で、かなり集落の性格が違う。どちらも数十人レベルの集落ですよ。だけど、片方は移住者がたくさんいて、反対側は全くいなかったりする。

「田舎」と一口に言っても、そこが離島なのか、山奥なのか、海沿いなのか、雪深いところなのか。自然条件は千差万別だし、歴史も違う。その結果、千差万別の文化を持った「田舎」が生まれます。

一方、「都会」というのは、多くの人間が集まる場所。他の土地出身の人も多いです。ならば、そこの文化というのは、比較的、似たものになります。千差万別の背景を背負った誰もが納得できる文化になる、ということです。都会っていうのは、どこも似たり寄ったりです。

だから田舎に移住したければ、その前に数多くの土地を見るのが大切だと思います。何らかの縁があって初めて訪れた田舎に感動し、移住するってのは、男子校出身者が大学に入ってたまたま隣の席になった女の子に消しゴム拾ってもらったから惚れちゃって結婚する、みたいなもんです。「当たり」の確率が、単純に低い。

さて。数学ではこういう感じのやつを「最良選択問題」って言いますね。お見合い問題、秘書問題、なんて言い方もします。

今からn人の人とお見合いするとしましょう。お見合い相手との結婚を断ると、その人とはもう二度と会えない。お見合い相手と結婚すれば、その後は他の人とお見合いできない。このような条件の時、どういう選択をしたら最良の結果が得られるのか、という問題です。

結論から言えば、n /e(e分のn)の人は会うだけで結婚しない(スルーするってこと)。で、その後は、今までの中で最高の相手が現れたら結婚する。そうすれば37%の確率で最適解が選べます。

このeってのはネイピア数っていって約2.7です。だから、nが100の場合(100人とお見合いする場合)、100÷2.7=37。37人目まではスルーして、その後、今までの中で最良だなと思う人に会えば結婚すべし、ってことです。(まぁ厳密に言えば、後半50番目から70番目は「今までで3番以内なら結婚しろ」とか条件は変化しますよ)

で。田舎に移住する場合でも、仕事とかとセットになっていて(地域おこし協力隊みたいな)、そのタイミングでしか移住できない、っていうのなら、この考え方が適用できますね。10個の仕事から最適なのを選ぼうとするなら、最初3つはスルーすべし。こういうのは、ことわざでは「慌てる乞食は貰いが少ない」とかいいますが、「乞食」って放送禁止用語なんでしたっけ。じゃあ「急がば回れ」とでもいいましょうか。

まぁ、ともかく「田舎」って全然違うから、しかも市町村ってレベルじゃなくて集落ごとで性格違ったりするから、色々と見て回った方が「当たる」確率が高くなるよ、ってことです。「他の市町村を見ないで、もう移住しちゃったよ!」っていう人は、隣の席の女の子と生涯仲良く添い遂げるっていうのも、無い話じゃないですからね。こういうのは、ことわざでは「住めば都」といいます。