和噺

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インターネットの噺(その1)

僕が山奥に引っ越した9年前はどんなデジタル状況だったのかなと振り返ってみたら、ツイッターフェイスブックだってまともに使っている人はいないし、ユーチューバーだって誰もいないし、ブログですらごく一部の人が始めているくらい、という感覚でしたからね。そこから2019年へのタイムスリップ感、半端ないですな。こんにちは。僕です。みなさん元気ですか? ごはん食べていますか? 楽しく生きていますか?

さて。僕は9年前に山奥に住んでからというもの、強制的にネットと遮断されました。おまけにテレビも入らない。地デジの電波が入らないんですよ。山に阻まれちゃって。受信できるのはBS・CSの衛星放送のみ。おかげでアメフトと大リーグに詳しくなりましたよ。

オリンピックとかもね、日本戦以外は見えるんですよ。日本戦だけ見えない。ワールドカップも。ほら、日本戦だけ盛り上がって、みたいな人を「にわか」とか言って叩くじゃないですか。真逆ですからね。日本戦だけ見ない、てか見れない。地上波のチャンネルが放映権持っていますからね、日本戦は。衛星放送には回ってこないんですよ。ホンジュラスエクアドルとか見てましたわ。つまんないですわ。

さて。当たり前のように「インターネットが無い」と言っていますが、一体どういうことか。

皆さん、都会に住んでおられるからーー少なくとも僕に比べたら絶対に都会に住んでおられるから、引っ越した先でNTTとかに申し込めば光回線を引き込んでくれるでしょう。でも、我が家はそうはいかない。田舎すぎるため、民間のインターネット工事業者の対象地域外となっています。

イオンで買い物していると、「今、抽選会やっているんですよ、くじ引き(もしくはビンゴ)やっていきませんか?」とかいう笑顔のお兄さんが近づいてきて、くじ引き(もしくはビンゴ)引くと「あ、当たりですよー! おめでとうございます」とか言ってボールペンの1本でももらって、「ところでお客様、ご自宅にインターネットって引かれていますか?」って言われて、「いやー、まだ無いんですよ」とか答えると、「それだったら今キャンペーン中でして(以下略」みたいなブラック商売あるでしょ。

僕は、どんなにボラれたって回線を引いて欲しいので、ああいうのにはもれなく付いて行って申し込もうとするんですが、住所を調べられた時点で、愛想の良かったお兄さんが「ほう、このような山奥によく光が欲しいなどと宣(のたま)ったものだの、山へ帰れこの腐れ土人」みたいな感じになって結局、受け付けてもらえないんですよ。仕方ないからボールペンもらって帰りますよ。

ただ、僕もその辺は抜かりなく、インターネットを引く当てはあったのです。僕が住む町は、人口数千人の小さな町でして、山間部の集落もたくさんあります。そういうところは、ほとんどが民間企業の対象外地域になっているんですよ。だから我が町では「全戸に無料で光回線をつなげます」という制度があり、町民なら申し込めば自治体負担で回線を引いてくれるわけです。

この制度を使って、ほぼ全戸に無料で回線を引っ張っている我が自治体。ビバ地方交付税。ビバふるさと納税。うちの近所の老夫婦のところにも光回線が来ていて、光回線を通じて町内放送を聞いていますから。「明日のぉ~、一斉清掃に参加される方はぁ~、公民館前にぃ~、午前8時にぃ~、集合してください~」みたいなお知らせが流れてきます。

そんな感じですからね。うちにも引いてくれるだろうと思っていたんですが。どうも雲行きが怪しい。聞くと、我が家に光回線を引くために数百万円ものお金がかかるというではありませんか!

どういうことかと言うと、まず前提として我が家の立地を説明しましょう。我が家と隣の家とは、約2キロ離れています。その間、電線はありません。車が通れる細い一本道が、田んぼの中をくねくねと通っています。ところで、僕は家を建てるにあたり、というか家を建てる土地を探すにあたりいくつか条件があって、その中の一つが「既存の電線から1キロメートル以内の土地」というものでした。

なぜかというと、電力会社は1キロメートル以内ならば無料で電線を延長してくれるのです。1キロ以上となると、自己負担。そりゃもうべらぼうな金額になります。あのコンクリの電柱を1本立てれば、何十万円とかかるわけです。だから、何としても既存の電線から1キロ以内の土地にしたかった。

で、我が家と隣家は2キロ離れていて、その間の電柱(電線)は無いのです。隣の家から道沿いに電気を引くと、自己負担が発生してしまう。ところが我が家の下方(うちは山の斜面の土地です)にビニールハウス用の電線が通っていたんですよ。それは、1キロ以内。だからうちの電気は、そこのルートを使って引いているんです。

で。うちにネットを引くためには、この既存の電線に沿ってネット回線を引いてこないといけない。ただ、言ったようにこれはハウス用の電線ですから、ネット回線なんか無いのです。となると、3キロ分ぐらいを我が家だけのために、ネット回線を新設しないといけないことになる。そのコストをNTT(自治体から委託されてる業者はNTT)が見積もったら数百万円になって、これは町議会で承認されないことには予算がつかない、という話になりました。

はいー。話が大きくなりましたですよ。まぁ、ここで「おのれがやる言うたんと違うんか、おぅ? 口から吐いた言葉、飲み込むたぁええ度胸しとるやんけワレ!」と町役場の担当者に詰め寄ってもいいんですが、私、生まれ育ちが温厚なものでして。元華族ですから。本名は有栖川識仁ですから。ていうか、役場にもお世話になりまくっているんで。知り合いもいっぱいいるし。「あ、じゃあいいです」みたいに引き下がったわけですよ。

さて。民間企業の対象外地域。役場も予算オーバーで設置できない。あとは自力でやるしかない。

そうだ、南極にもネット環境あるんだから、衛星を通じたネットサービスとかあるんじゃね? と検索したんですが、イーロンマスクのスペースXもその当時はまだペットボトルロケット小金井公園で飛ばしていた頃ですからね。全然無いんですよ、そんなサービス。

ちなみに、サクッと「検索したんですが」とか書いていますが、ネットを使いたいがために、この当時の僕は街中の貸家の契約を切らずにいたのです。この田舎町にはネカフェとか、無料Wi-Fiスポットとか無いですから。私設ネカフェですよ。車で15分かけて山を降りてネットを使う、みたいな生活をしていたんですわ。

で、色々調べた結論として。無理やな、と。いつかイーロンマスクが衛星ネットサービスを開始するまで、山奥でひっそりと待つか、と。山奥の家は、衛星放送はバリバリ入るけど、地デジは入らないし、携帯の電波も圏外ギリギリだし。世間と隔絶された生活を続けていくか、と。

ん。携帯? 携帯電話? それが圏外ギリギリ?

はい。ちょっと言い訳させてくださいよ。当時の僕は、ガラケーを通話専用として使っておりました。アイフォン4も持っていたんですが、それはWi-Fi専用機として使っていたんですよ。私設ネカフェ(繰り返すけど、以前住んでた賃貸住宅ね)で、パソコンとWi-Fi専用スマホを使っていた。つまり、携帯の電波を使ってネットを使っていなかったんです。

山奥に住んでから1年ぐらいでしたかね。気付いたんですよ。あれ、携帯で通話できてるってことは、ネットが使えるんじゃね?って。

ただ、我が家の携帯は圏外ギリギリ。直線距離で4キロ離れたところにAUのアンテナが立っていて、うまいこと山に引っかからずに来た電波をギリ拾っている状態。どれだけギリギリかというと、我が家から10メートルぐらい離れると圏外になります。なんか、木の影とか山の影とか、そういう具合のやつで。

ちなみに、もともと土地を決定する段階で、ここが携帯通じるってことは確認済みでした。しかも、ソフトバンクやドコモでは入らないけれども、AUだったら入るってことで、引っ越すにあたってソフトバンクからAUに機種変しましたからね。(その機種変の過程で、ソフトバンクのアイフォン4の契約を切ったので、こいつがWi-Fi専用機に格下げされたのです)

ただ、携帯の電波ではパソコンが使えない。しかし調べてみると、ポケットWi-FiなるものがAUから発売されているではないか! シリーズ「ネット誘致」。次回は「AUのポケットWi-Fiを買いに行くの巻」。乞うご期待ください。